『明日のエサ キミだから』の感想・レビュー|笑えるのにちゃんとホラー【若杉公徳】

明日のエサ キミだから

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若杉公徳(わかすぎきみのり)が描く、突如現れた異形の怪物によるパニックホラー。

そんな最近では見慣れた設定でも、描く人が変わればここまで印象が変わるのかと思わされる作品。

人が次々と死んでいくのに、なぜか笑ってしまう。ホラー漫画なのに笑える。ギャグ漫画なのにちゃんと怖い。

この一見ちぐはぐな組み合わせを成立させてしまう若杉公徳の魅力を存分に味わえる作品『明日のエサ キミだから』を紹介します!

あらすじ

平凡な高校生活は、ある日突然学校に現れた謎の怪物によって一変する。

モンスターパニックに陥った学園では、いつしか正体不明の怪物から生き延びるために「一日一人を餌として差し出す」という異常なルールが日常化していた。

常に命の危険と隣り合わせの中、救助が来ないまま、残る人数はあとわずか⋯。

学園内で最底辺の立場に置かれながらも、ここまで運良く生き延びてきた主人公の笹塚聡太(ささづかそうた)にもついにエサの順番がやってくるのだった。

怪物の脅威だけでなく、追い詰められた人間の欲望や保身、本性が次々とあらわになる中、生き残りを懸けた壮絶な戦いが幕を開ける。

作品解説

『明日のエサ キミだから』は、『デトロイト・メタル・シティ』や『みんな! エスパーだよ!』で知られる漫画家・若杉公徳が手掛けたサバイバルホラー作品。

「怪物よりも人間のほうが恐ろしい」と感じさせる心理描写や、ブラックユーモアと皮肉を交えながら人間の本性を描く作風が本作ならではの魅力である。

作者は海外ドラマのような先の読めない展開を意識して構成したと語っており、予測不能なストーリーとシリアスな空気の中に独特の笑いを織り交ぜた演出は、若杉公徳の作品の中でも異色の存在として語られている。

月刊ヤングマガジンでの連載を経てヤンマガWebへ移籍し、全10巻で完結した。

笑えるのに、ちゃんとホラー

おすすめポイント・感想・レビュー

学園に怪物が現れ、1日1人差し出さないと全滅。

導入だけ見ると、よくあるパニックものですが、そこは若杉公徳。

シリアス一辺倒にならず、若杉公徳らしいテンションで下ネタギャグをスッと差し込んでくる。

それなのに、ちゃんとパニックホラーとしても成立している。

このバランス感覚が『明日のエサキミだから』の一番の魅力だと思います。

二番煎じでも若杉公徳が料理すると⋯

正直モンスターパニックものとしては目新しさはありません。

流行りに乗った設定と言われればそれまでなのに、まあ面白いからいいかと思わせられてしまう。

完全な二番煎じのような導入から、こんなにもオリジナルな作品が生まれることに感心してしまいます。

例えば、望月峯太郎の『ドラゴンヘッド』、古谷実『ヒミズ』のようにシリアス路線に変化していく漫画家も多いですが、自分の作風を崩さないまま、いつものギャグ的なノリやエロ要素もしっかり組み込んでいて、ちゃんとギャグ漫画としても、パニックホラー漫画としても成立しているのがすごい。

底辺主人公という立ち位置が面白い

主人公の笹塚宗太は、いわゆるモブキャラ。

パニック漫画で、ここまで「何も持っていない」主人公も珍しいですね。

若杉公徳作品としても、何もなさそうで、実は何かに秀でている男っていうパターンが多かったので、本当に何の能力もない主人公って新鮮です。

常にエサ候補、ずっと底辺。そんな笹塚が怪物を手懐けることで成り上がっていく様子が面白い。

もちろん今回も安心?の童貞主人公ですよ。笑

シリアスとギャグの緩急がクセになる

簡単に言うと人の死に方のバリエーションで遊んでいるような作品なので、基本不謹慎です。

⋯なんだけど、その中で、笑っていいのか引いていいのかわからない空気感が絶妙。

今回はギャグ寄り、次は一気にホラーへ。

この振り幅のギリギリを攻めてくるバランス感覚は、さすがの一言でした。

こんな人におすすめ

グロ描写はありますが、重くなりすぎないので、グロ耐性がそこまで高くなくても案外読める人は多いと思います。

話の切り方と展開の速さが心地よく、テンポの良さで一気読みしてしまう作品でした。

シリアスな展開の直後に来る軽いノリがくせになります。

真面目なホラーを求める人には合わないかもしれませんが、王道のパニック漫画に飽きてきた人におすすめ。

最終回でタイトル回収する展開は個人的に大好き。

ゲットクリックスというNetflix的なパロディや、全裸監督を思わせる要素。

そんなふざけた設定を、物語の根幹に関わる部分に持ってきているのに、読んでいて、がっかりしたり白けない。

なんとなく納得させられてしまうのは、もう才能としかいいようがないです。笑

なっはん

類似作品 こちらもオススメ!

怪獣ミケのモチーフは『寄生獣』(岩明均)っぽさを感じました。捕食時の口の開き方とか、かなりそれ。同じく学園を舞台にしたモンスターパニックなら『ハカイジュウ』(本田真吾)、設定的には『漂流教室』(楳図かずお)、『進撃の巨人』(諫山創)なんかも近いです。

あとがき

改めて読んでみると、いつものようなギャグもしっかり入っているのに、ちゃんとパニックホラーとしての体裁を保っているのが不思議。

怖さだけでも笑いだけでも終わらず、そのギリギリのバランスを最後まで崩さない。これはホントすごい。

二番煎じと言われそうな題材でも、「若杉公徳が描くとこうなるのか」と感心させられました。

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若杉公徳は、数多くの作品を発表しているけれど、ジャンルは変わっても、いまだにギャグを捨ててない貴重な漫画家。

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