岩明均(いわあきひとし)の作品を読んでいると、
漫画の面白さってホントに画力が全てじゃないなと思う。
ストーリーの構成が上手すぎて、
グイグイと物語に惹きこまれてしまう。
作風とも見事にあの絵がマッチしている。
血なまぐさい戦闘シーンをあえて淡々とした描写で描き、
感情の器低が激しくなる場面では目を超クローズアップさせる。
それが、逆に残酷さを際立たせている。
重いメッセージ性と、ある種、哲学的なテーマを掲げながらも、
説教臭くならず読むものに強烈な印象を与えてくれる作品たち。
デビューからずっとコンスタントに連載を続けてる割には、
作品数は少ないが、そのどれもが評価が高いマンガばかり。
アシスタントなしで面白い作品を描き続ける漫画家!
岩明均のおすすめ作品ランキング!
7位 剣の舞(けんのまい)
(作品解説)
上州の地で、武士たちに襲われて家族を皆殺しにされてしまったハルナ。
道場で疋田文五郎に剣を教わり、武士への復讐をしようとする物語。
(雪の峠・剣の舞に収録)
(感想)
剣の舞は冒頭のシーンから、
最後の終わり方含めて悲しいお話。
歴史上の人物と架空の人物を織り交ぜ、
うまくリアリティを演出している。
武士達による農民達への略奪狼藉、上泉伊勢守秀綱の敵を一蹴するシーン。
ラストのハルナが戦うシーンは素晴らしくて、この漫画を読んで良かった!と感じさせてくれる。
最後の終わり方は悲しくていつもこの剣の舞を読む度に涙が流れるんだけど
読み終わった後にくるのは「胸クソが悪い」という感じではなくて
「良い漫画を読めた!」という充実感が襲ってくる
岩明均は絵と人間の悪い部分を描き出す描写が多いんで苦手という人もいたりするけど
そんな人にも是非読んでほしい!
6位 ヘウレーカ
(作品解説)
『寄生獣』『ヒストリエ』の岩明均による、古代地中海の第二次ポエニ戦争中のシラクサを舞台にした歴史漫画。
ローマとカルタゴの戦争は熾烈さを増しており、要衝の地であるシラクサはどちらの陣営に着くか大いに揺れていた。
そんな中、カルタゴ派の将軍がクーデターを起こし、ローマとの敵対を決意する。
主人公のダミッポスは恋人クラウディアがローマ人であるため、彼女と共に天才数学者アルキメデスのもとへ逃れ、クラウディアの家族を解放するため奔走する。
(感想)
なんといっても『アルキメデスの兵器』による大量殺戮が一番の目玉!
蒸気機関による丸石の高速射出機。
城壁に登った人間を一瞬で輪切りにする自動鋸(のこぎり)。
戦艦を釣り上げる巨大クレーンなど、明らかにオーパーツw
ローマ兵がかわいそうだ…(笑)
人間を輪切りにすることに掛けては日本屈指の画力を誇る岩明均。
ヘウレーカでも、その画力を遺憾なく発揮してます。
なので、グロテスクな描写が苦手な人にはオススメしづらいかな?
1巻完結なので、あっという間に読めます。
ヘウレーカが面白いと思ったなら、ヒストリエも間違いなくおすすめできる。
時代背景もヘウレーカが紀元前3世紀後半、
ヒストリエが紀元前4世紀なので、作品の雰囲気はよく似てます。
5位 風子のいる店(ふうこのいるみせ)
(作品解説)
吃音のせいで自分を出せない風子は、そんな正確を変えたいと思って喫茶店ロドスのアルバイトを始める。
始めは上手くいかないことばかりだけど、店のマスターやお客さんとのやりとりの中でだんだんと成長していく。
(感想)
岩明均の初期作品。
寄生獣以降の作品と比べると、作風はまったく別物。
絵柄など荒削りな部分は目立つけど、
風子の成長や人間ドラマをしっかりと描ききっているのはさすが。
この次の作品寄生獣で爆発的ヒット作を生み出すわけだけど、
そのストーリーテリングの巧みさはこの頃から如何なく発揮されてる。
現在の岩明均作品とは違い人間の断面図が出てこない読み手に優しい漫画です。
4位 雪の峠(ゆきのとうげ)
(作品解説)
戦国末期のお話。
関が原の戦いで出羽国に追いやられた佐竹家はその地で新しく築城することに。
しかし、渋江内膳の意見を推す当主の佐竹義宣と老臣たちの考えが合わず…。
(雪の峠・剣の舞に収録)
(感想)
七夕の国の連載後に描かれた短編作品。
寄生獣の時もそうだったけど岩明均って漫画家は、
本当に人の汚い気持ちとか心の痛みとか上手く描き出す漫画家だなぁって思う。
史実に則った歴史物マンガなんだけど、面白い。
ページを開く度にどんどん惹きつけられる。
ヒストリエのような西洋史もいいけど、日本史物も意外と合うな。
上杉謙信や徳川家康などの有名武将も登場。
完成度の高いオススメ短編作品。
3位 ヒストリエ
(作品解説)
マケドニアのアレクサンドロス大王の書記官を務めたエウメネスを主人公にした歴史マンガ。
マケドニアの戦闘隊形であるファランクスの説明など、細かいディティールを丁寧に描いているのが特徴。
一般的なマンガファンだけでなく、コアなファンや専門家からの評価が高く文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞と手塚治虫文化賞マンガ大賞の両方を受賞している。
(感想)
寄生獣の作者がこんなの書くかーというのが始まった時の印象。
ヘウレーカで感触つかんで長期連載にってことだったのかな。
普通ならがっかりして、早くいつもの描けよと、
言いたくなるところだけど、これもめちゃくちゃに面白いから困る。
岩明均の父親が考古学者ということもあって、その専門的な知識を活かしている所が魅力。
とくに、チェスの原型とも言えるマケドニア将棋が登場するシーンは典型的な場面。
岩明均って、人の底にある感情みたいなものを表現するのがうまいなと思う。
表情豊かに描くのがうまいわけじゃないのに、妙な怖さがある。
スキタイ人の残虐さとか。
あーこいつそうゆうことやりそーって感じにちゃんと見える。
綿密な取材をしていることに加え、アシスタントを使わずに書いていて、
さらに単行本になる時には大幅に加筆修正を加えている。
話自体の順序も入れ替えたりしてるので、
雑誌と見比べてみるのもおすすめ。
そりゃ新刊出るの時間かかるわ。
完結まではまだもう少し(だいぶ)かかりそう。
進みが遅いので、完結したらもう一度まとめ読みしたい。
今のところ上位2つが強いので完結しても、
ランキングここより上がることはないかなぁ。
2位 七夕の国(たなばたのくに)
(作品解説)
「七夕の国」は岩明均の異色作とも言える作品。
とある一族の血縁をもったものに現れる「超能力」
その一族を祭る「六月の七夕」の謎。
謎解きが主な物語になるが、岩明均ならではの過激なシーンも展開。
また恋愛要素も含まれていて切なくなる物語。
(感想)
岩明均の描く主人公らくしくない主人公。
全作品の中で一番、凡人(超能力あるけど)で脳天気。
でもそれが、決して明るくない物語を、
ちょうど良く読みやすくしてる気がする。
最初から最後まで緻密に計算されていて、
少ない巻数で見事にまとめてる。
序盤の緩さから、謎が次々と明らかになっていって、物語が加速していく。
最終巻の物語の加速感は打ち切りかと思えるほどw
岩明均が寄生獣を描いてなかったとしても、この作品は大好き。
評価低い人もいる作品だけど、ランキング1位でもいいくらい好き。
寄生獣というヒット作の後でありながら、
全く気負うことなくこんな漫画をかけちゃうのはすごい。
巻数少ないけど、よくあるヒット作の後の駄作漫画ではありません。
さくっと読めるので、岩明均の残虐描写が苦手じゃなければ、
間違いなくおすすめ出来る漫画。
読み終えればなにをもって「七夕の国」なのか理解できる。
1位 寄生獣(きせいじゅう)
(作品解説)
リサイクルやエコロジーという言葉が盛んに唱えられた1990年代をダイレクトに象徴するような作品。
2014年にアニメ化・映画化された。
寄生生物との奇妙なバディもので、スリリングな戦闘とグロテスクな描写がクローズアップされがちだが、環境問題や人間性の喪失といったものに対して強いメッセージ性を打ち出している。
5巻巻末の「寄生OL」は親交のあった漫画家「須賀原洋行」の作品。
(感想)
単純に好きな漫画ランキングでも上位に入る名作!
今でこそ多くなったけど、当時こっち系の漫画で一般的にヒットした作品は珍しかった。
内容がグロかったのに女子の間でも回し読みされるくらい人気だった。
1巻の顔がぱかっと割れる大ゴマシーンが当時怖かったな。
乗っ取られたお母さんが帰ってくるあたりから、読んでて胸が痛くなる。
信じたくなくて包丁で自分の腕を(ミギーだけど)切ってみせようとする表情。もう涙腺決壊。
メッセージ性がつよいけど、それが嫌じゃない程度で、
最後までグイグイ読める。10巻で終わったのは大正解。無駄なし。
約20年の時を経てのアニメ化に興奮したのに、
無駄に現代アレンジしてしまったのがとても残念。
あの服のダサさまでひっくるめて寄生獣なのだ。
アフタヌーンでの連載で、メディア化もされず(アニメ化よりも前)に、
1000万部を達成した隠れた大ヒット漫画。
あとがき
ランキングまとめて見ると、
やっぱり岩明均作品にハズレ無し!
短編から長編まで全て面白くておすすめできる!
もっと認知度高くてもいい漫画家だよなぁ。
最近のアニメ化・映画化まではホントに一般知名度低すぎた。
もともと、ストーリーの構成力が抜群に高いけど、
寄生獣のヒットで打ち切りの心配がなくなって、
序盤から伏線をバンバン散りばめて作品を書けるようになったおかげで、
寄生獣の以降の作品はさらに全体的な完成度が上がってる。
逆にゆっくり書けるようになったせいで、
読者は早く先が読みたいのに休載でやきもきするというデメリットも。
もっとたくさんの作品読みたいんだけどなぁ。