『焔の眼』の感想・レビュー|歴史改変SFとバイオレンスアクションの融合【押切蓮介】

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「もし敗戦後の日本が植民地になっていたら?」

そんな大胆な発想から始まる『焔の眼(ほむらのめ)』は、漫画家・押切蓮介(おしきりれんすけ)の作品の中でも、ひときわ異彩を放つ歴史改変アクションです。

人間の醜さや差別、暴力といった重いテーマを真正面から描きながら、規格外の男・クロの圧倒的な強さで爽快感もしっかり味わえる異色作となっています。

今回は、押切作品らしいダークな世界観と、豪快なバイオレンスアクションが楽しめる『焔の眼』を紹介します。

あらすじ

世界大戦で敗戦国となった日本は、架空国家「ショルゴール」の占領下に置かれ、日本人は強制居住区に押し込められ、自由を奪われた生活を強いられていた。

そんななか、売春宿で下女として生きる少女・沙羅(サラ)は、ショルゴール軍による虐殺に巻き込まれてしまう。しかし、そこへ現れたのは、素手で武装兵を圧倒する人間離れした力を持つ異形の男・陀大膳黒(クロ)だった。

絶望しかなかった世界で圧倒的な強さを見せるクロとの出会いは、希望を失っていた沙羅の運命を大きく変えていく。

作品解説

『焔の眼』は、漫画家・押切蓮介による歴史改変SF・戦争アクション漫画。

第二次世界大戦の歴史を大胆に改変し、日本が架空国家「ショルゴール」に支配された世界を描く独創的な設定が特徴。

残虐な支配体制のもとで希望を失った人々が自由を求めて抗う姿を軸に、人間の尊厳や抵抗の意志を重厚なドラマとして描いている点が本作の大きな魅力である。

押切蓮介らしい容赦ない暴力描写と緊張感あふれる演出に加え、クロの圧倒的な戦闘力と揺るがない信念が物語を力強くけん引し、歴史改変SFとバイオレンスアクションを融合させた異色の作品となっている。

敗戦日本を描く、衝撃のIF戦記!

おすすめポイント・感想・レビュー

いわゆる押切ダークサイドの作品だけど、こっち方面でホラー要素のない作品はめずらしいかもしれません。雰囲気的には『椿鬼』や『ツバキ』のような作品と近い印象。

『焔の眼』でも、押切作品らしい人間の醜さや暴力描写は健在です。

IFとはいえ、戦争、差別、暴力を真正面から描く、かなり重たいテーマを扱った作品ですが、これだけ暗い世界を描いているのに、不思議と読後感は悪くありません。

読者の気が滅入ってきたところで挟まれる、醜悪な敵たちを一撃で粉砕する人間離れしたクロのアクションは痛快。

絶望の中にクロという規格外の存在がいることで、エンタメとしてもしっかり成立しているので、むしろ「面白かった!」と素直に思える作品でした。

コミックスの帯には「押切蓮介版『はだしのゲン』×『小公女セーラ』×『空手バカ一代』」と書かれていたんですが、まさにそのまんまのイメージ。笑

もし敗戦後の日本が植民地になっていたら

「もし日本が敗戦後も占領され続けていたら?」

この発想だけでも、歴史改変ものが好きな人ならかなりワクワクするんじゃないでしょうか。

終戦日が1945年8月15日であることなど、現実の第二次世界大戦を思わせる要素を取り入れながら、敵国を架空国家ショルゴールに置き換えることで、歴史ではなく物語として自由に描いているんですよね。

IF歴史ものではありますが、『ジパング』(かわぐちかいじ)のような、史実との違いや歴史考証を味わうタイプの作品ではありません。

よくある歴史改変作品とは違う自由度を持たせているからこそ、容赦ない暴力や差別、人間の醜さも遠慮なく描ける。

このリアルとフィクションの混ぜ方が本当に上手い。

歴史漫画というより、「こんな世界だったら人はどう生きるのか」を描いた人間ドラマとして楽しめました。

沙羅の成長物語

クロがあまりにも強烈なので、どうしてもクロにばかり目がいきがちですが、この物語の主人公は間違いなく沙羅です。

ショルゴール人と日本人のハーフというだけで差別され、日本人からも異端扱いされ、売春宿では人間らしい扱いも受けられず、ただ生きるだけで精一杯。

そんな少女がクロと出会い、少しずつ前を向いて、自分の意思で立ち上がっていく、その成長物語が面白い。

だからこそ、沙羅を助けてくれる数少ない人たちの存在もすごく心に残ります。

押切蓮介の作品って、人間の醜さを描くのが本当に上手いんですが、その分、優しい人や信念を持った人が何倍も魅力的に見えるんですよね。

この成長物語が軸にあるからこそ、派手なアクションとのバランスがより際立っています。

フィクションとカタルシスを一手に担うクロ!

『焔の眼』を語るうえで、クロの存在は外せません。

作品を通して、胸糞展開がかなり多い漫画ですが、それを全部ひっくり返してくれるのがクロなんです。

ストリートファイターの豪鬼みたいな見た目の大男が、拳銃をものともせず、ミサイルを受け止め、戦車すら素手で叩き壊す。もう人間というより災害レベルです。

フィクションの塊みたいなキャラですが、でも、それがいい!

胸糞悪い敵が次々と登場するからこそ、クロが一撃でぶっ飛ばしてくれる爽快感がたまらない!

『刃牙』でいうところの、範馬勇次郎VS軍隊のイメージが一番近い。そりゃもうこの時点で歴史考証とかどうでもよくなります(笑)

こんな人におすすめ

暴力描写や虐待、性的な描写もあり、全体的にかなりヘビーで、万人向けの作品ではありません。

ただ、グロ表現に抵抗がなく、「もし日本が敗戦後に占領され続けていたら?」という歴史改変設定に惹かれる人には、かなりおすすめです。

暗い物語ですが、その何倍も圧倒的なカタルシスを味わえるので、娯楽エンタメ作品としても申し分ない作品。

結末もしっかりまとまってはいるんですが、終盤が少し駆け足で「あと1巻あればもっと良かったのに」と感じました。

クロが沙羅を守るために窮地に追いやられる終盤は、王道ですがやっぱり熱い。

…とはいえ、それまでがあまりにも反則級に強すぎて、「クロがこんなことで苦戦するか?」とは少し思いました。笑

クロが生きていて、成長した沙羅と再会するラストは好き。

ある程度予想できる展開ではありましたが、この作品にはこの結末が一番似合っていた気がします。

めちゃめちゃ暗いのに娯楽エンタメ漫画としても楽しめる異色作!

類似作品 こちらもオススメ!

まず思い浮かぶのは『グラップラー刃牙』(板垣恵介)。範馬勇次郎はクロそのもの。笑

また、作品の帯にも書かれていた『はだしのゲン』(中沢啓治)、『小公女セーラ』(フランシス・ホジソン・バーネット)、『空手バカ一代』(梶原一騎・つのだじろう、後半は影丸譲也)も、併せて読むとより楽しめる…かもしれない。笑

あとがき

めちゃくちゃ暗い作品なのに、読み終わると「面白かった」と素直に思える。不思議な魅力がある作品でした。

あれだけ理不尽な世界だからこそ、クロが全部ぶっ飛ばしてくれる爽快感が気持ちいい。

「暗い漫画=読むのがつらい」というイメージは、きっといい意味で裏切られると思います。

押切蓮介のおすすめ漫画作品ランキングもチェック!

『焔の眼』を読んで押切蓮介作品が気になった人は、ぜひほかの作品ものぞいてみてください。

ホラー、青春、恋愛、バイオレンスと、作品によってまったく違う顔を見せてくれるのも押切作品の面白いところ。

「こんな作品も描くの!?」という発見もきっとあるはずです。

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