『こもれ陽の下で…』の感想・レビュー|打ち切りが惜しい異色のファンタジー【北条司】

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『シティーハンター』の北条司が、植物と話せる少女を描いていた。そう聞くだけでも、ちょっと意外ではないでしょうか。

『こもれ陽の下で…』は、派手な戦いや悪党ではなく、人と自然の小さな交流を描く優しいファンタジー。

打ち切りで終わってしまったのがホントに惜しい、その魅力を紹介します。

あらすじ

『こもれ陽の下で…』は、植物と心を通わせる不思議な力を持つ少女・西九条紗羅が、父とともに各地を巡りながら花屋を営み、人々や植物が抱えるさまざまな悩みと向き合っていく姿を描く。

妹の事故をきっかけに一本の木を切ろうとした少年、達弥は、紗羅との出会いを通して自然や命、人とのつながりへの向き合い方を少しずつ変えていくことになる。

幻想的な設定を軸にしながらも、描かれるのは何気ない日常や登場人物たちの心の成長であり、繊細な人物描写と温かな空気感が物語を優しく包み込む。

派手な展開ではなく、小さな出会いや別れを丁寧に積み重ねることで、静かな感動と心地よい余韻を残してくれる作品。

作品解説

『こもれ陽の下で…』は、漫画家・北条司が描くSFファンタジー作品。

原型となる短編『桜の花 咲くころ』をもとに連載化され、1993年から1994年に『週刊少年ジャンプ』で掲載された。

単行本は全3巻(ゼノンコミックス版は全2巻)で完結している。

これまでのハードボイルドな世界観とは異なる、穏やかな世界観の中で、北条司ならではの美しい作画と豊かな感情表現が光る作品であり、漫画家・北条司の表現の幅広さを感じられる。

植物がつなぐ、優しさが心に染みるファンタジー

おすすめポイント・感想・レビュー

『こもれ陽の下で…』は、これまでの北条司作品の中でもかなり異色の作品。

銃撃戦もない。派手な悪党もいない。あるのは、不思議な少女「紗羅」と、彼女の周りで起きる小さな出来事。

植物の声を聞き、会話ができる紗羅が、その力を通じて人々の悩みや想いと向き合っていく物語になっています。

基本は1話完結型で読みやすく、気づけば紗羅と達弥の日常をもっと見ていたくなる。

優しい空気が最後まで心地いい作品です。

北条司の画力だからこそ際立つリアルなファンタジーの世界

植物と話せる少女。設定だけ見れば、かなりファンタジーなんですが、北条司の絵で描かれると妙に説得力があるんですよね。

非現実的な設定なのに、妙に現実味があって、リアルの中にファンタジーが融合している感じが楽しい。人物や町並みを現実感たっぷりに描く北条司の画力があってこそです。

また、花や木々の描写も本当に繊細で、ただの背景ではなく、ちゃんとそこに生きていて、植物そのものが登場人物のように感じられます。

っていうか改めて週刊連載の絵じゃないですよね。化物すぎる。

北条司作品の中でも異色の優しいファンタジー

『シティーハンター』のようなアクションを想像して読むと、たぶん驚きます。かなり静かです。

この作品が描くのは、人と自然のつながりや孤独を抱えた人たちの心の変化。大きなカタルシスで押し切るのではなく、小さな交流を重ねながらじんわり温めてくるタイプ。

読んでいる時より、少し時間がたってから思い出したくなる感じ。

北条司の新しい一面を楽しめます。

打ち切りが本当に惜しい!

全3巻(新装版は全2巻)なので読みやすい。とはいえ、打ち切り作品なんですよね。

正直、当時の『週刊少年ジャンプ』の連載漫画の中では、かなり浮いていた作品だったと思います。

現在の読者の大半が大人という状態ならいざ知らず、当時はアンケートで上位取るのも厳しかっただろうな、と理解はできます。

当時の少年たちには早すぎたけど、今の漫画界なら、もっと違う評価を受けていた作品なんじゃないかな。そのへんは残念。

物語にはまだ広げられそうな設定が多かったので、もっと続きが読みたかった。

とはいえ、ぶつ切りではなくきちんと結末が描かれています。ラストもきれいにまとまっていて読後感はとてもいいので、その点はご安心を。

こんな人におすすめ

名作と呼ぶにはさすがに巻数が短すぎるけど、知る人ぞ知る北条司の隠れた良作です。

派手なバトルより、読後に心が温かくなる漫画を読みたい人におすすめです。

『シティーハンター』や『キャッツアイ』とはまた違った北条司の魅力が知れる作品です。

ちなみに短編集に収録されている『桜の花 咲くころ』はこの作品の前日譚にあたります。そちらから読むと、紗羅の過去や物語の余韻をより深く味わえますよ。

物語の軸に、紗羅は本当は大人なんだけど、子どもの姿のままで成長できないって設定があります。

ただ、その理由や、止まった時間がどうすれば動き出すのかみたいな、核となる謎がきちんと語られないまま終わってしまったのは残念でした。

物語的にもまだまだ広げられそうな感じだったのでもっと先まで見届けたかったな…。

今でも改めてリブート作品として読みたいくらい

類似作品 こちらもオススメ!

穏やかで優しいファンタジー作品だと『夏目友人帳』(緑川ゆき)や、『蟲師』(漆原友紀)なんかもおすすめです。

植物と会話できる系の作品だと、パッと思いつくのは『フールナイト』(安田佳澄)くらいかな?ありそうであんまりない設定ですね。

あとがき

改めて振り返ると、『こもれ陽の下で…』って本当に北条司作品の中では珍しい漫画ですよね。

銃撃戦もないし、強烈な悪党が出てくるわけでもない。派手ではないけれど、読み終わったあとに優しい空気だけが残る。たまにはこういう北条司作品もいいなあと思わせてくれます。

全3巻なのでサッと読めるんですが、読み終わると、もう少し紗羅と達弥の日常を見せてくれよと思ってしまうんですよね。きれいに終わっているのに、まだ読み足りない。やっぱり惜しい作品です。

派手なバトルより、読後に心がじんわり温かくなる漫画を読みたい人には特におすすめ。『シティーハンター』とは違う北条司の一面を知りたい人にも、ぜひ手に取ってほしい作品です。

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北条司には、本作のような優しいファンタジーからハードボイルドなアクションまで、作風の異なる魅力的な作品がそろっています。

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