『鋼鉄の華っ柱』の感想・レビュー|転落した御曹司の逆境成り上がりコメディ【西森博之】

鋼鉄の華っ柱

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『鋼鉄の華っ柱(こうてつのはなっぱしら)』は、漫画家・西森博之(にしもりひろゆき)が描く逆境ギャグコメディ。

『お茶にごす。』と同じく、SF要素のない完全な現代劇で、大富豪から一文無しへ転落した御曹司・御前崎真道を主人公に、逆境からの成り上がりを描いています。

西森博之作品らしい魅力を残しながら、腕力だけではなく、頭と機転、ときには悪知恵まで使って窮地を切り抜けるのが本作のみどころです。

あらすじ

『鋼鉄の華っ柱』は、大企業グループの御曹司として何不自由なく育った高校生・御前崎真道(おまえざきさねみち)の転落人生から始まる物語である。

成績優秀、スポーツ万能、容姿にも恵まれた真道は、堂々とした振る舞いで自らを「紳士」と称する一方、頭の回転が速く、必要とあれば相手の裏をかくしたたかさも持つ主人公。

ところが、御前崎グループの会社が倒産したことで生活は一変。財産も豪邸も失い、幼なじみの夏野らとともに、それまで知らなかった庶民の暮らしへ放り込まれてしまう。

それでも真道は悲観することなく、便利屋で働きながら自分なりの「紳士道」を貫いていく。どんな状況でも「紳士的策略」と強靱な精神、持ち前の機転を武器に乗り越えていく逆境ストーリーである。

作品解説

『鋼鉄の華っ柱』は、漫画家・西森博之による逆境ギャグコメディ作品。

御曹司から一転してすべてを失う設定ながら、貧乏生活そのものより、どんな状況でも自分の信念を曲げない真道の生き方を軸に物語が展開するのが特徴である。

堂々と「紳士」を掲げながら、必要とあれば策を巡らせる計算高さも持ち合わせ、そのギャップが笑いと痛快さを生み出している。財産や立場が変わることで見えてくる人間関係や、真道に振り回されながら変化していく周囲の人物も見どころ。

不良やケンカではなく元御曹司を主人公に据えながら、強い信念を持つ人物とクセのある仲間たちを描く西森博之作品らしさもしっかり味わえる作品である。

『週刊少年サンデー』で連載され、全9巻で完結。

転落した御曹司の逆境成り上がりストーリー!

おすすめポイント・感想・レビュー

相変わらず、複雑な初期設定に、ガチガチなキャラ設定で動かしにくい主人公。

道士郎や柊様もそうだけど、この頃の西森作品って面倒な設定からスタートして、制約の中で笑いをとるという枷でも課していたんだろうか。笑

この主人公だったら絶対に取らない行動、絶対に言わないセリフみたいな制約がある中で、話を展開させるの大変だろうなって思うけど、その窮屈さから笑いを作るのがうまいんだよなぁ。

やはり西森博之も「制約と誓約」で漫画力を高めているのかもしれない。笑

西森博之作品といえばケンカの強い主人公を思い浮かべますが、『鋼鉄の華っ柱』はちょっと違います。

頭が切れるし、行動力もある。そして、かなり腹黒い(笑)。「紳士」を自称しているくせに、必要なら卑怯すれすれの策まで平気で使います。

それでも最後には妙にカッコよく見える。

紳士道を突き進み、腹黒さと品の良さを併せ持つ真道と、それに振り回される仲間たちの掛け合いが魅力の作品です。

何が何でもカッコつける男、御前崎真道

真道はとにかくカッコつける男。

でも決して俺様キャラではなく、元御曹司らしい品を兼ね備えている。(ナチュラルに人を見下してはいる。笑)

どんな状況でも紳士でいようとするし、嫉妬しない、動揺しない、根に持たない。

そうまさに完璧人間…。少なくとも本人はそのつもりです(笑)。

でも実際は、爆笑を必死にこらえたり、失敗を何事もなかったようにごまかしたり、微妙にムキになったりする。他人には完璧を装っているのに、近しい仲間にはバレバレな感じが妙に人間臭くていいんですよね。

そんな真道に、夏野、朝涼、ルー子、品川などの周囲のキャラが、呆れたり振り回されたりしながら付き合っていくのも楽しいところ。主人公と周囲の温度差がいい笑いを生んでいます。

中でも、『今日から俺は!!』の伊藤と今井を一人でこなすような夏野の存在がいい。

真道(の中では)はあくまで完璧であり、主人公一人で笑いを起こせるタイプのキャラではないので、夏野が真道の常識外れな言動を、そのまま流さず拾ってツッコんでくれるから、真道の面白さをさらに引き出してくれます。

腕力より頭で勝つ!これまでとは違う西森ワールド

真道自身も十分強いんですが、本作の面白さはそこじゃない。

相手の性格を読んで、状況を利用して、より効果の高い方法を考え、必要なら卑怯すれすれの手まで使う。

真道的に言えば「紳士的策略」です(笑)。

便利屋をほぼタダ同然で手に入れたり、自分が飛び込み営業している姿をわざと従業員に見せて士気を上げたり。

やってることが、いちいちズルい。

三橋のズル賢さにも通じるところはありますが、真道は楽をするためにズル賢いわけじゃないんですよね。ちゃんと自分も動いたうえで、さらに効果を大きくするために策を使う。

だから夏野も「お前ズルいぞ!」と言い切れない(笑)。

そして西森博之作品らしく、読んでて本気で腹が立つタイプの悪党も出てきます。そういう相手を単純な喧嘩の強さではなく、さらに一枚上の策略で追い詰めていくのが気持ちいい!

ギャグとシリアスの切り替えはやっぱり西森博之

くだらないことで散々笑わせておいて、ここぞという場面では急にカッコいい。西森博之作品のこの切り替えは、『鋼鉄の華っ柱』でもやっぱりうまいです。

特に後半の遠霧編では、それまでの軽い便利屋コメディから一転して、かなり重い話へ入っていきます。

正直、作品の空気はかなり変わります。

でも、前半で「御前崎真道とはどういう男なのか」を散々見せられているからこそ、シリアスになったときに効いてくるんですよね。

相手がどれだけ悪くても、状況がどれだけ重くても、真道は真道。自分のやり方を変えない。

普段当たり前のようにカッコつけている男は、本当にカッコつけなきゃいけない場面でも当然のようにカッコつけるのです。はい。

むしろシリアスになればなるほど、どんな状況でも自分の美学を曲げない真道のカッコよさが際立っていきます。

もっと真道の成り上がりを見たかった!

いや、9巻完結は短いって!

この漫画は間違いなく、続けた分だけ面白くなり続けるタイプの作品でしょうに!

どんな依頼人でも出せるし、どんなトラブルにも巻き込める。便利屋という設定、真道とめちゃめちゃ相性いいと思ったんですけどねえ。

サブキャラに関しても、今回は真道一人で笑いを生む構図じゃない分、それぞれ真道と組むことで違った笑いが生まれるのが面白かった。回を重ねれば重ねるほど魅力が出てきそうなキャラばかりだっただけに残念。

便利屋パートをもっと広げてほしかったし、学校、仲間、真道の将来など、まだ広げられそうな要素が盛りだくさん。

もちろん、シリアスな遠霧編も面白いんです。それは間違いない。

でも、そこへ行くのが5巻、いや10巻くらい早い(笑)。

成り上がりものとしてもっとじっくり読みたかったなぁ。ここからもう一段、二段と面白くなりそうな感覚が強かっただけに、もっともっと続きを見たかった作品です。

あ、もちろん話が破綻して終わるわけでもなく、遠霧家の問題もしっかり決着がつき、最終話も多少の駆け足感はあるものの、しっかりと区切りのあるラストになっています。

こんな人におすすめ

大きな一本のストーリーを追うより、日常の中で次々と笑いが生まれる西森博之作品が好きな人にはかなり相性がいいです。

逆境からの成り上がりが好きな人、腕力より頭を使って相手の上を行く主人公に爽快感を覚える人にもおすすめです。

遠霧家編からのシリアス展開、そして一気に最終話へ
遠霧家編そのものは読み応えがあるし、重い状況でも真道が紳士を貫く姿はカッコいい。

でも、正直ここで終わっちゃうとは思わなかったな。

結果、後半の7巻以降最後まで、回想と蘭子関連の話で終わってしまったのは残念でしたね。

もともと、途中で挟む予定のエピソードだったのか、ラストに持ってくるつもりの長編エピソードだったのかはわかりませんが、遠霧家編の決着とともに、日常パートに戻ることなく、そのまま連載終了となってしまいました。

よく話題にのぼるけど『鋼鉄の華っ柱』は、結局、打ち切りだったのかなぁ。

朝涼は西森作品でも珍しいヒロイン
朝涼って、西森博之作品の中でもちょっと変わったヒロインですよね。

真道との恋愛を特に強く匂わせるでもなく、基本は一歩引いた位置から物語を支える。西森作品によく登場する、魅力的なサブヒロインにも近い立ち位置。

夏野がライバルと相棒を兼任するようなキャラだったのと同様に、朝涼もメインとサブどちらも兼任するような不思議な役割のヒロインでした。

だからこそ、最終話で急に二人の関係へスポットが当たる展開は「ここで来るのか!」となりましたね。

真道の告白に涙を見せる朝涼が急に可愛い。告白の場面までブレずに真道が真道なのもいい。笑

それまでの二人の積み重ねがあるからこそ効くラストでした。

これがサッチャンだったらどうかな…。

類似作品 こちらもオススメ!

毎回言ってるけど西森博之作品は唯一無二。類似作品なんてありません。…という前置きをしつつ(笑)。

殴り合いよりも、策略、悪知恵、ハッタリを駆使して成り上がっていくギャグ漫画だと、『カメレオン』『ジゴロ次五郎』などの加瀬あつし作品が近いかなと思います。

社会からはみ出した主人公たちが、便利屋的な仕事をしながら変な人たちとの騒動に巻き込まれていく『僕といっしょ』(古谷実も似た部分があります。

ジャンルはかなり違うけれど、ゼロから知略・ハッタリを武器に成り上がっていく漫画だと『トリリオンゲーム』(稲垣理一郎・池上遼一も面白いですよ。

あとがき

成瀬先輩とか、今後いい仕事してくれそうなキャラだったのになぁ。惜しい。

この先に待っている西森博之ACT2、ACT3への進化を知っているからこそ、どうしても「もっと読みたかった」という感想になっちゃうな。

とはいえ、全9巻なので初めて手に取るにも読みやすい長さの作品ではあります。この作品が初めての西森博之作品という人の感想も聞いてみたい。

一つの作品を長く描き続けるようなスタイルは、もうやらないのかなぁ。西森作品の場合、こういうストーリーありきじゃない作品は、いくらでも引き伸ばしてほしいんだけど。

西森博之のおすすめ漫画作品ランキングもチェック!

『鋼鉄の華っ柱』で真道の紳士道が気に入ったなら、西森博之が描いてきたほかの主人公たちもぜひ。

三橋、恵、道士郎、柊様など、タイプはまったく違うのに、それぞれに「こいつなら絶対こうする」という芯がある。全員が譲れない美学を持っているのが面白いところ。

実際に読んだ西森博之作品をランキング形式で紹介しているので、次に読む作品選びの参考にしてみてください。

→ 西森博之のおすすめ漫画作品ランキングはこちら

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