『荒川アンダーザブリッジ』の感想・レビュー|予測不能なシュールギャグ全開ラブコメ【中村光】

荒川アンダーザブリッジ

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中村光(なかむらひかる)の『荒川アンダーザブリッジ』は、シュールギャグ、ナンセンス、不条理コメディが好きな人にはかなり刺さる作品。

予測不能な展開と濃すぎるキャラクターたちに振り回される漫画。でも、その振り回される感じがめちゃくちゃ気持ちいいんですよね。

今回は、シュールさ全開なのにどこか温かい『荒川アンダーザブリッジ』を読んで感じた魅力と、良かったところも、少し惜しいと感じたところも、正直にレビューしていきます。

あらすじ

『荒川アンダーザブリッジ』は、超一流企業の御曹司・市ノ宮行(リク)が、荒川の河川敷で暮らす、自称「金星人」の美少女・ニノに命を救われたことから始まるラブコメディである。

「人に借りを作らない」という信条を貫いてきたリクは、その恩返しとしてニノの恋人となり、橋の下で暮らすことを決意する。

そこには河童を名乗る村長や星形マスクの男、自称シスターなど、常識では考えられない住人たちが集まっていた。河川敷での型破りな人々との共同生活に戸惑いながらも、リクはこれまで信じてきた価値観や生き方を少しずつ見つめ直していく。

作品解説

『荒川アンダー ザ ブリッジ』は、漫画家・中村光によるギャグ・ラブコメディ作品。

作者の中村光の小さい頃の夢だった「橋の下に住みたい」という妄想を漫画にしたというこの作品は、シュールな笑いと切なさが織り交ざる独特の世界観が特徴。

個性豊かな登場人物によるテンポの良い掛け合いとシュールな笑いと恋愛を軸に、人とのつながりや幸せの形を独特の感性で描いた物語である。

ギャグ漫画でありながら、読後には温かい余韻が残る、中村光の世界観を象徴する作品の一つである。

『ヤングガンガン』で連載され、全15巻で完結している。2010年には新房昭之監督、シャフト制作によってテレビアニメ化され、その後はテレビドラマや実写映画にも展開されたほか、アニメ第1期は第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査委員会推薦作品に選出された。

荒川河川敷の非日常な日常を描いたギャグ漫画!

おすすめポイント・感想・レビュー

前作『中村工房』のショートギャグを踏襲しながらも、ストーリー漫画としての軸を持たせた挑戦作です。

『聖☆おにいさん』と同じくギャグ漫画だけど、ギャグの方向性というかテイストは違います。

ギャグ漫画としては『聖☆おにいさん』の方が万人受けな感じ。『荒川アンダーザブリッジ』は、前作の中村工房と同様に、よりシュールギャグ、ナンセンスギャグ、不条理ギャグといったジャンルに近い感じ。

読者をいい意味で振り回してくれます。

6ページで笑いと感動を届けるテンポが気持ちいい!

単行本で読むと気づきにくいですが、1つのストーリーに見えて実際には6ページごとに完結するショートストーリーの集合体で構成されています。

単行本に収録されている話数はなんと25話近い!

大枠のストーリーは続きながらも6ページ(1話)ごとにちゃんとオチがあるのがすごい。

6ページの間に起承転結が収められているので、まとめて読むとめちゃくちゃテンポのよいギャグ漫画に感じます。

熱量がダントツ!予測不可能な展開が癖になる

とにかく予測不可能な展開が魅力!

各話のストーリー、セリフ、展開がことごとく、こちらの予想をいい意味で裏切ってくれる。

そして、その裏切りが心地いい。

途中、キャラクターの行動がブレたり、シナリオが迷走しているように感じる部分もあるけれど、この駄作と傑作の間を綱渡りしているような危うさこそが『荒川アンダーザブリッジ』の魅力。

作品の熱量という意味では中村光作品の中でもダントツでした。

魅力的なキャラクターたち

キャラの魅力という点でも、『荒川アンダーザブリッジ』が一番好き。

濃ゆい出オチのようなキャラクターばかりなのに、どのキャラもどんどん魅力的になっていく。

読み進めるごとに「まだこんな引き出しがあったのか」と驚かせてくれます。

ツッコミ役にも関わらずちゃんとリクでも笑えて、かつ愛すべきキャラになってるところもスゴイ。

キャラの動かし方がめちゃくちゃうまいです。

こんな人におすすめ

今だと『聖☆おにいさん』から遡ってくる人の方が多いのかな?

当時この『聖☆おにいさん』と『荒川アンダーザブリッジ』を同時連載していたことに改めて驚きます。同ジャンルで、ギャグ漫画を2作連載抱えてどちらもヒットした漫画家なんてそうそういないんじゃないかな?

終盤少し迷走した感はありますが、とはいえ、シュールでナンセンスな笑いが好きな人には文句なしにおすすめできる作品です。

久々にめちゃくちゃ面白い漫画に出会えたと思える作品だっただけに、金星編あたりからの展開はやっぱり残念。あくまで電波の中の日常を描き続けて欲しかった。

「これじゃあまるで最終回のみたいじゃないか」リクが叫んでいた中盤のロケット打ち上げ回。

当時は、リクと同じように「そんなのイヤすぎる!」と思って読んでいたけれど、実際にあそこで最終回だったらストーリーとしては最高にきれいな終わり方でしたね。

そこを覆してまで続けたのに、その後のシナリオ的な盛り上がりが、ロケット打ち上げを超えることがなかったのは残念でした。

ただ、ギャグマンガとしては盛り返して来ていたので、『聖☆おにいさん』ほどとは言わないけれど、もう少し日常ギャグ漫画として続いてほしかったという思いもあります。

右の頬を殴られたら左の頬を差し出しなさい…歯をくいしばっていれば大丈V

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中村光作品の中でも、個人的にこの作品が一番うすた京介みを感じる。『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(うすた京介)を万人受けするマンガにしたような印象。

マサルさんよんでからこの作品に戻ってくると、きっと作品から「うすたイズム」を感じられるはず。

あとがき

改めて読み返すと、「よくこんなの思いつくな(笑)」の連続でした。

シュールギャグ、ナンセンス、個性的すぎるキャラクター。その全部を勢いで押し切るような、不思議な魅力が詰まった作品でした。

ギャグ漫画って、笑わせ続けるだけでも大変なのに、そこへストーリーまでちゃんと乗せてくるんですよね。それでいて6ページごとに毎回オチまで付けてくるんだから、本当に器用だなぁと思います。

終盤には少し惜しいと感じる部分もありましたが、それを差し引いても何度も笑わせてもらった作品です。

中村光作品の中でも、個人的に一番熱量を感じた作品でした。

シュールギャグやナンセンスコメディが好きな人なら、きっとこの作品の世界観にハマるはずです。

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万人向けとは少し違いますが、そのぶんハマったときの破壊力は抜群。

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