『あずみ』の感想・レビュー|斬るほどに切ない!歴史の裏で暗躍する最強の少女【小山ゆう】

あずみ

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これまで数々の魅力的な男たちを描いてきた漫画家・小山ゆう(こやまゆう)。『お~い!竜馬』で坂本龍馬を描いた小山ゆうが、次に主人公に選んだのは、まさかの女の子。

圧倒的な剣の腕を持ちながら、あまりにも純粋な少女を主人公に描いた時代劇が『あずみ』です。

歴史の裏側で繰り広げられる激しい戦いと、容赦なく訪れる出会いと別れ。

最強の刺客でありながら純粋な心を持つ、あずみの生き様と作品の魅力を紹介します。

あらすじ

戦国から泰平の世へ移り変わろうとする時代、人里離れた山奥で10人の少年少女がひそかに育てられていた。その一人が、驚異的な剣の腕を持つ少女・あずみである。

彼らは「爺」と呼ばれる人物の教えを受け、世の平和を乱す者を討つ刺客となるため、幼い頃から厳しい修行を重ねてきた。

刺客としての技術を徹底的に叩き込まれてきたあずみたちは、やがて外の世界へ出る日を告げられるが、その前に待っていたのは、これまでの常識を揺さぶるほど過酷な試練だった。

人を斬る技術は身につけても、世の中のことも人の感情もほとんど知らないあずみは、命じられた使命を果たす旅の中で、これまで知らなかった人の優しさや悲しみ、さまざまな生き方や価値観に触れ、自分が教えられてきた「正しさ」と向き合いながら激動の時代を歩んでいく。

作品解説

『あずみ』は、漫画家・小山ゆうによる激しい時代劇と少女の成長物語を組み合わせた歴史・アクション作品。

戦国末期から江戸初期を背景に、実在の武将や歴史上の人物を交えながら、泰平のため人知れず敵を討つ少女刺客を主人公にした物語である。

容赦のない剣戟や暗殺を描く一方、純粋なあずみが使命と自らの感情の間で揺れ、外の世界を知ることで変化していく姿も大きな軸となっている。

『ビッグコミックスペリオール』で連載され、全48巻で完結。第43回小学館漫画賞、第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、上戸彩主演で実写映画化されたほか、舞台化も行われた。

鬼神の剣と、菩薩の心を持つ最強の少女が背負う宿命

おすすめポイント・感想・レビュー

徳川家康、加藤清正、柳生宗矩ら歴史上の人物が登場し、その歴史の裏側で刺客が暗躍するという、史実とフィクションの混ぜ方が面白い。

剣が走る速さ、森の静けさ、人が死ぬ瞬間のあっけなさまで伝わってくる演出力もさすがです。

刺客が敵を倒していく時代アクションとしても面白いですが、『あずみ』がここまで残る理由はそれだけじゃない!

なんといっても、主人公のあずみがめちゃくちゃ魅力的。小山ゆうといえば、魅力的な男主人公の印象も強かったので、初めて読んだときは女の子が主人公というのがすごく意外でした。

全48巻は長いなぁと思うんだけど、読み始めるとあっという間です。

第一話から容赦なし!一気に引き込む凄絶なスタート

とにかく初期の展開が衝撃的!中でも1話のインパクトがすごい!

山奥で刺客として育てられた10人の子供たちが、いよいよ外の世界へ。その前に修行の総仕上げとして、とんでもなく残酷な試練が待っています。

あずみが元祖というわけではないんだろうけど、初めて読んだときは「すごい漫画が始まったな」と思ったのを覚えています。

しかも本当にすごいのは、これがまだ序の口なんですよね。笑

最強の刺客なのに純粋すぎる、あずみが魅力的

『あずみ』最大の魅力は、やっぱり主人公のあずみです。

戦えば恐ろしく強い。それこそ普通の剣豪では相手にならないレベルなのに、中身は世間知らずで無邪気な女の子。弱い者を放っておけず、ときには敵にさえ情を向けてしまいます。

このギャップがいいんです。

どれだけ強くて、どれだけ敵を倒しても、大切なものまで守れるとは限らない。戦えば戦うほど孤独や喪失が積み重なり、使命を果たすという生き方に悩むあずみ。

次第に、読んでいて気になるのも「次は誰をどうやって倒す?」じゃなくて、「あずみは、最後どうなるんだろう」になっていくんですよね。

全48巻の長い物語を飽きずに読めたのは、あずみの魅力のおかげです。

敵も味方も容赦なし!出会いと別れの人間ドラマ

今作では、本当にたくさんのキャラが登場しますが、パッと顔が思い出せるくらい特徴的なキャラが多いです。小山ゆうは敵も味方も魅力的に描くのが本当にうまい。

あずみが旅先で出会う人々はもちろん、敵として現れる人物にも癖や生き方があり、捨てキャラが少ないんですよね。

重要だと思っていたキャラや、普通の漫画では最後まで生き残るようなキャラ、死亡フラグすら立っていない仲間。魅力的なキャラクターたちが、まるでヤラレ役かのように、敵も味方も本当にあっけなく死んでいきます。

魅力的な人物が登場しても、「この人は最後まで生きるだろう」と安心できないのが『あずみ』。

出会って、心を通わせて、さあこれからというところで容赦なく別れがやってくる。出会いと別れの積み重ねが、とにかく切ないです。

しかし、ブサイクなキャラをよくあそこまで不細工に描けるよな。笑

美しいのに残酷!小山ゆうの絵と殺陣に引き込まれる

敵をバッサバッサと斬り伏せる。強敵との激しい鍔迫り合い。そんな剣戟アクションとは真逆の殺陣を見せてくれる『あずみ』。

  • あずみの剣が一閃したと思ったら、次のコマではもう血が噴き出している。
  • 刀の軌道のあと、首に斬られたとわかる線が1本入るだけ。
  • 振り向きざまに、首に刀をサクッと刺すだけ。

派手な斬り合いなんかしなくても、こんなんでも人は死ぬよと言わんばかりに、大げさに引っ張らず、淡々と命を絶っていく。

淡々と決着するからこそ、人が斬られる怖さまで妙にリアル。このあっさりした感じが、逆にいい。

小山ゆう独特のスピード感ある殺陣の見せ方もめちゃくちゃうまいです。

一連の動きで見せる美しさももちろんあるんだけど、映画のカットシーンをつなげるように、一コマ一コマで動きを見せる殺陣が印象的。

小林まことのような、静止画なのにまるで動いているようなスピード感とはまた違う。漫画のコマでシーンをつないでいくことで動きを表現し、構図とコマ運びだけで「速い」「強い」を伝えてくる。結果、刀の速さまで見えるような殺陣になっています。

さすがに刀の切れ味が良過ぎる感がしないでもないけど。そこはご愛嬌。笑

こんな人におすすめ

剣客ものや時代アクションが好きなら、まずおすすめです。ただ派手に斬り合うだけではなく、戦う人間の生き方や、命を奪うことの重さまで描かれるので、重めの人間ドラマが好きな人にも刺さると思います。

さらに徳川政権が固まっていく時代を舞台に、実在した人物たちの陰で架空の刺客・あずみが暗躍するのも面白いところ。

史実とフィクションを混ぜた歴史エンタメが好きな人におすすめです。

序盤のテンポが早すぎて感情が追いつかない!
最初の試練が、10人を親しい者同士で組ませて殺し合わせること。あずみは大好きだったなちと戦うことになります。

いや爺、10年かけて育てておいて、いきなり半分に減らして本当にいいのか?笑

仲間同士の殺し合いから始まり、あずみ達による村人惨殺シーンは衝撃的でした。

女子供構わずサクサク行きます。

その先は、試練を生き残った仲間たちと歴史の裏で暗躍する話になるのかと思ったら、その仲間たちまでどんどんいなくなる。

もうね、使い捨てにもほどがある。こんなに仲間どんどん減らして大丈夫かと、読んでるこっちがハラハラします。

読み返してみて何がすごいって、一番印象に残っている仲間たちとの別れが、まだ序盤も序盤だということ。まさかそこから48巻続くとは…。

序盤から使い切る思い切りの良さがすごいです。

長期連載だからこその面白さとマンネリ
その後もあずみは新しい人と出会い、事件に巻き込まれ、戦い、そして大切な人を失っていきます。

これが『あずみ』の面白さではあるんですが、48巻も続くと、さすがにパターン化してしまった感じも。

小山ゆう自身も、『あずみ』に関しては、先の展開をほとんど決めずに描いていたと語っているけれど、「あずみが人と出会う→事件に巻き込まれる→大切な人を失う→戦う」という流れが重なるため、後半は展開に既視感もありましたね。

爺の仇をうって終わってればきれいにまとまった作品だったとは思う。…といいながら、新しいキャラが出てくると結局好きになっちゃうんだけどね。完全に小山ゆうの手のひらの上です。

最終回、あずみには幸せになってほしかった
ラストで、あずみは自分の出生につながるかもしれない安曇野の隠れ里へたどり着きます。

ここで何か分かるのかと思ったら、結局はっきりしないまま。あずみ自身の人生にも明確な答えは出ず、物語は第一部完となります。

個人的には、48巻もあずみの人生を追い続けたからこそ、もう少し明確な答えが欲しかったなぁ。これだけ人を失ってきたんだから、最後くらい幸せになってくれよという気持ちはちょっとある。…いやかなりある。笑

せめて、千代蔵は殺さなければ、もう少しきれいなハッピーエンドで終われた気がするけど。

一方で、小幡月斎(爺)のあとに、あずみを囲う天海が、完全に善人ではないまでも最後まであずみの味方だったのは良かった。歴史ものでは黒幕的な悪役として描かれることが多いキャラだけに、最後に裏切られるんじゃないかとひやひやしてました。

そして、なんといっても飛猿が生き残ったのは大きかったですね。あずみに関わった人物が次々と死んでいく中、飛猿は物語初期から最終盤まで生存する珍しい存在。「誰も残らない」物語にならなかっただけでも、飛猿の存在にはかなり救われました。

小山ゆう、どれだけの魅力的なキャラを生み出して、自ら葬ってきたんだろう。笑

類似作品 こちらもオススメ!

江戸時代を舞台に、死ねない男と剣客たちの生き様を描いた『無限の住人』(沙村広明や、人ならざる力を持つ女性戦士たちが過酷な宿命を背負って戦う『CLAYMORE』(八木教広なんかは『あずみ』と共通する面白さがあります。

『あずみ』序盤の展開は、『キングダム』(原泰久)の羌瘣たちが挑む「祭」を思い出す人も多いのでは?

あとがき

やっぱり小山ゆうの絵柄と時代劇はよく合うなぁ。

暗殺者として純粋培養されてたところから、ずいぶん遠くまできたもんだ。最後まで読んできて、あずみの長い人生をずっと見てきたような感覚になりました。

目を閉じると、小山ゆうお得意の歪む背景の中、「あ゙あ゙あぁー」という叫びとともに散っていくキャラが浮かぶようです。

死んでいったキャラの顔や性格が思い出せるほど。それくらい、それぞれみんな、ちゃんと作品の中で生きてたよね。

改めて振り返っても魅力的なキャラが多すぎて、あずみが誰も死んで欲しくないからと一人になりたがるのもよくわかる。笑

小山ゆうのおすすめ漫画作品ランキングもチェック!

『あずみ』が気に入ったなら、小山ゆうのほかの作品もぜひ読んでみてください。

時代劇だけでなく、ボクシングや青春、歴史ものなど題材はさまざまですが、どれも感情を揺さぶられる作品ばかりですよ。

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