『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』の感想・レビュー|大人の本気すぎる仮面ライダーごっこ【柴田ヨクサル】

東島丹三郎は仮面ライダーになりたい

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好きな漫画家を10人あげろと言われたら、自分の中では間違いなくランクインしてくるのが柴田ヨクサル(しばたヨクサル)。

…それでも、思ってしまっていた。

柴田ヨクサルのピークは『ハチワンダイバー』までだったよな、と。

そこへ来ての『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい(とうじまたんざぶろうはかめんライダーになりたい)』ですよ。めちゃくちゃ面白い!

久しぶりに「これこれ、ヨクサル漫画ってこれだよ!」となりました。

40歳になっても仮面ライダーを目指す男を主人公に、笑いと格闘、そして仮面ライダーへの愛をこれでもかと詰め込んだ本作。今回はその魅力をたっぷり紹介します。

あらすじ

幼い頃から仮面ライダーに憧れ、40歳になっても「仮面ライダーになりたい」という夢を追い続ける東島丹三郎は、山で修行を重ね、熊と渡り合えるほどの肉体と格闘能力を身につけていた。

しかし、どれだけ強くなっても本物の仮面ライダーにはなれない。夢と現実の差に苦しんだ末、長年集めてきたグッズを手放して夢を諦めようと決意する。

そんな時、ショッカーを名乗る強盗事件に偶然遭遇した東島は、仮面ライダーのお面をかぶり、鍛え上げた肉体だけを武器に立ち向かう。その事件をきっかけに、彼の周囲には、同じようにヒーローへの憧れを捨てられない大人たちが集まり始めるのだった。

やがて単なる偽物と思われていたショッカーの背後に、本物の悪の組織が存在することが明らかになり、仮面ライダーは実在しない世界で、本物のショッカーとの本気すぎる仮面ライダーごっこが始まる。

作品解説

『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』は、『エアマスター』『ハチワンダイバー』の漫画家・柴田ヨクサルが描くヒーローアクション作品。

仮面ライダーそのものではなく「仮面ライダーになりたかった大人」を主人公に据え、子供の頃に抱いた夢や情熱を捨てずに生きる姿を真正面から描いている。

一見すると荒唐無稽な設定だが、柴田ヨクサル作品らしい豪快な肉弾戦と強烈なキャラクターによって、本格的な格闘漫画としても楽しめるのが大きな魅力。

仮面ライダーへの愛と作家性が融合した、笑えて熱い異色のヒーロー漫画である。

『月刊ヒーローズ』で連載を開始し、その後Webマンガサイト「コミプレ」へ掲載の場を移している。2025年にはテレビアニメ化もされた。
(協力:石森プロ・東映)

これが、柴田ヨクサル版 シン・仮面ライダーだ!笑

おすすめポイント・感想・レビュー

今までの作品でも、何かに取り憑かれたような人間を描いてきた柴田ヨクサル。

そんな漫画家に「仮面ライダーになりたい大人」を描かせたら、そりゃこうなるよなと(笑)。

真面目なのかギャグなのか分からない。でも、登場人物は全員めちゃくちゃ真面目に仮面ライダーごっこをやってる。

だからこそ笑えるし、その本気がそのまま熱さにも変わっていく。

ヨクサル節と仮面ライダーの相性が想像以上でした。

バカバカしい設定を熱さでねじ伏せてくる

40歳になっても仮面ライダーになりたい。

そのために山へこもって体を鍛え続け、熊とも戦えるくらい強くなりました。

それがこの物語の主人公、東島丹三郎。

この時点でツッコミどころだらけ。

パッケージだけ見れば完全にギャグ漫画のような設定なのに、登場人物は誰一人としてふざけてない。大真面目。

真面目なのにどこかズレている会話、突然飛び出す妙に説得力のある言葉。全員本気だからこそ笑えるし、いつの間にかその本気にこっちまで乗せられてしまうんです。

独特な台詞回しに、突然始まる格闘、必殺技、決めポーズ、大見得。プロレス的な熱さも仮面ライダーとめちゃくちゃ相性がいい。

バカバカしい設定を圧倒的な熱量でねじ伏せ、「細かいことはいいから読め!」と思わせるパワー。この謎の説得力こそヨクサル漫画です。

本物のショッカーが出てきてから一気に世界が変わる

序盤の「大人たちが本気で仮面ライダーになろうとしている」だけでも十分面白いんです。

ところが、そこへ本物のショッカーが出てくる。

え、本当にいるの?

仮面ライダーはフィクションなのに、ショッカーと怪人だけは実在する。東島たちからしたら、とんでもなく理不尽な世界です。笑

しかも東島たちは改造人間じゃありません。変身ベルトも特殊能力もなし。あるのは鍛え上げた肉体と格闘技、そして「自分は仮面ライダーだ」という強烈な思い込みだけです。

そんな東島たちが、人間を超えたショッカー怪人へ挑んでいく。この無茶な構図がいいんですよね。「普通の人間VS怪人」だからこそ燃える!

いやまあ、その思い込みが異常なパワーを生んでいるんですけどね。笑

登場人物全員が濃い!

仮面ライダーに本気でなりたいと思い続けた、ちょっとおかしい主人公と、それを取り巻く仲間たち。…で終わらないのが柴田ヨクサル。

仮面ライダー1号になりたい東島だけでも十分おかしいのに、V3を目指す島村一葉、自分を電波人間タックルだと信じる岡田ユリコ、ライダーマンこそ一番熱いと語る島村三葉。

さらにはライダーじゃなく、ショッカーになりたいと言い出すヤクザまで出てきます。

本当にまともな人がいない。笑

しかも全員が自分の価値観に対してめちゃくちゃ真剣。ツッコミ役や回し役なんて必要ないとばかりに、それぞれが勝手に突っ走るから話もどんどん脱線します。

中盤からはショッカーや怪人側にもスポットが当たり、モブっぽかった人物にまでドラマが生まれる。

「この人、そこまで掘り下げるの?」というキャラにも普通に見せ場が回ってくる。主役も脇役も敵も、とにかく全員濃い。このキャラ作りはやっぱり柴田ヨクサルの大きな魅力です。

魅力が弱点にも

…と、それこそが魅力であり、かなり好きな作品なんですが、ここだけは言わせてください。

話が進まない(笑)。

キャラクターがどんどん増えて、それぞれにバトルがあって、ドラマがあって、さらにそこから別のキャラへ話が広がって…。

仮面ライダーだったら、怪人を倒したらさらに強い怪人が登場して…となるのがセオリーなのに、最初の怪人が全然死なない。なんなら、怪人側の修行パートまで始まる始末。笑

序盤の「次は何が起こるんだ?」という予測不能な面白さに比べると、中盤以降は似た流れが続くところもあります。

ただ、その寄り道で出てくるキャラがまた面白いから困るんですよね。

「早く本筋進めてくれよ」と思いながら普通に読んでしまう。このあたりを楽しめるかどうかで、中盤以降の評価は結構分かれそうです。

ヨクサル作品の楽しみのひとつ!過去作キャラの登場は?

柴田ヨクサル作品を追いかけている人なら、気になるのが過去作品とのクロスオーバー。

今回もちゃんとあります。

ただ、これまでのように過去作キャラがそのまま登場する感じではなく、「ん? この人ってもしかして…」とニヤニヤできる見せ方。

知らなくてもまったく問題ありませんが、知っているとちょっと得した気分になります。

具体的に誰なのかはネタバレなので後半で触れますが、ヨクサル作品を追いかけてきた人なら、おそらく同じところで反応するはずです。

今後の期待ポイント・考察

今後はどこまで仮面ライダーが揃う?
今後、個人的に一番気になるのはこれ。

『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』に登場するのは初代仮面ライダーに登場した怪人たち。

そして、ヒーロー側も昭和の第1期シリーズのキャラがメインの作品になっています。

平成ライダーは出てこないにしても、第2期のスカイライダーや第3期のブラックにまで踏み込むのかが気になるところですね。

第1期シリーズの中でもまだXやアマゾンを背負った主要キャラクターは出ていません。

最終的に昭和ライダー勢がズラッと揃うような劇場版仮面ライダーみたいな展開もそれはそれで見てみたい。どこまでやるのか、まだまだ楽しみです。

…っていうか東島40歳だったらブラック直撃世代じゃないの?

こんな人におすすめ

昭和の仮面ライダーに夢中になった人には、かなりおすすめです。1号、V3、タックル(ストロンガー)などへの思い入れが強ければ強いほど、登場人物たちの異常な熱量にも共感できるはず。

ただ、仮面ライダーを知らないと楽しめない漫画ではありません。

根っこにあるのは「好きなものを、どこまで本気で好きでいられるか」という話です。大人になっても捨てられない憧れがある人なら、それだけで十分夢中になれるはず。

最近の柴田ヨクサル作品はちょっと合わなかったという人にも、一度読んでみてほしいです。ヨクサル節、かなり濃いですよ。

今回のクロスオーバーはちょっと変化球
これまでの柴田ヨクサル作品では、過去作のキャラクターが名前もそのままで登場することがありましたが、今回はちょっと変化球。

東島たちを鍛える、虎のマスクを被ったトラマスター。

いやいやいや。どう見ても『エアマスター』の摩季でしょ。

もちろん作中で「相川摩季です」と名乗ったわけではありません。だから断定はできない。

まあ、理由なく理不尽な強キャラが出てきたらだいたい過去作キャラなんですけどね。笑

ヨクサル作品を知らなければ普通に謎の達人、知っていれば登場した瞬間からニヤニヤできる。こういうファンサービスはやっぱり嬉しい。

謎の男、八極八郎
そしてもう一人、気になるのが八極拳を使う八極八郎。

見た目はまんまジョンス・リーなんだけどな。笑

柴田ヨクサル作品の常連といえば、皆口由紀とジョンス・リーですが、違う名前での登場は初めてじゃないかな?

本人なのか、それとも過去作を意識したスターシステム的な別人なのか。過去作見てるとこのあたりも気になってしまいます。

俺のは「仮面ライダーごっこ」じゃないから…本気…だから…

類似作品 こちらもオススメ!

『ゼブラーマン』(山田玲司/原作:宮藤官九郎)は、特撮ヒーローに思い入れを持つ中年男性が現実のヒーローへ近づいていくという設定がかなり近いです。
『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』を読んで、昭和ライダーを振り返りたくなったなら、昭和ライダーたちの熱い戦いを描いた仮面ライダー漫画、『新 仮面ライダーSPIRITS』(村枝賢一/原作:石ノ森章太郎)もおすすめですよ。

あとがき

柴田ヨクサルと仮面ライダー、まさかこんなに相性が良いとは。

『ハチワンダイバー』以降はちょっと物足りなく感じる作品もあったんですが、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』は久しぶりに「これこれ!」となりました。

柴田ヨクサルって、どちらかというと知る人ぞ知る、ハマる人にはめちゃくちゃハマる漫画家というイメージだったんですけど、いつの間にか「仮面ライダー」なんてどデカい版権モノを描ける漫画家になっていたとは。笑

仮面ライダー好きが楽しめるのはもちろん、こんなにも仮面ライダー愛全開の作品なのに、知らなくても楽しめるのがすごいです。

アニメのヒットも大きかったですよね。アニメから来た人は原作のクセのある絵にさぞ驚いたことだろう。笑

柴田ヨクサルのおすすめ漫画作品ランキングもチェック!

『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』で柴田ヨクサルの濃さにハマったなら、『エアマスター』『ハチワンダイバー』など他の作品もぜひ。

格闘漫画から将棋漫画まで題材は違っても、変人たちが何かに全力でのめり込んでいく熱さはやっぱり共通しています。

柴田ヨクサル作品をまとめて読みたい方は、ランキングもあわせてどうぞ。

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