『涼風』の感想・レビュー|すれ違う高校生の青春恋愛漫画【瀬尾公治】

涼風

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少年マガジンで数々の恋愛漫画を描いてきた瀬尾公治(せおこうじ)

その作品を振り返るうえで外せないのが『涼風(すずか)』です。

陸上競技と高校生の恋愛を描いた爽やかな青春ラブコメかと思って読み始めると、これがなかなか一筋縄ではいきません。

ツンデレヒロイン・涼風の魅力はもちろん、今振り返ると「少年誌でここまでやってたのか」と驚くような展開も見どころです。

あらすじ

高校進学を機に広島から東京へ上京した秋月大和は、叔母が経営する銭湯兼レディースマンションで新生活を始める。そんな大和が学校のグラウンドで目を奪われたのは、高跳びの練習に励む同級生・朝比奈涼風だった。

一目惚れした相手が偶然にも同じマンションの隣人で、さらに同じクラスという思わぬ状況に胸を躍らせる大和。しかし、明るく積極的な大和に対して涼風は真面目で負けず嫌いな性格のため、二人の距離はなかなか縮まらない。

やがて持ち前の足の速さを見込まれた大和も陸上部へ入り、憧れから始まった恋は競技や仲間との出会いを巻き込みながら、二人の青春を大きく動かしていく。

作品解説

『涼風』は、漫画家・瀬尾公治による青春恋愛漫画。恋と陸上競技の間で揺れる若者の感情を軸に描かれる物語である。

物語序盤は日常の延長線にある出来事を丁寧に積み重ねながら、淡く不器用な感情の動きを描写し、進行とともに挫折や選択の重さが浮かび上がる構成となっている。

爽やかな学園ラブコメとしての読みやすさがある一方、好きだからこそ生まれるすれ違いや意地、将来への迷いまで踏み込んでいるのが特徴

恋愛描写の甘さに偏らず、未熟さを含んだ感情の衝突を正面から描いた作風には、後の瀬尾公治作品にもつながる恋愛漫画の基盤が見て取れる。

『週刊少年マガジン』で連載され、全18巻で完結。2005年には全26話のテレビアニメが放送され、公式ガイドブック『湯けむり恋愛白書』も刊行されている。後の『君のいる町』『風夏』へと作品世界がつながっており、瀬尾公治作品を続けて読むことで共通する世界観も楽しめる一作である。

瀬尾公治のルーツ的なスポーツラブコメ作品!

おすすめポイント・感想・レビュー

少年マガジンのラブコメ漫画家として、地位を確立するきっかけとなった恋愛漫画。

陸上を題材にした爽やかな青春ラブコメかと思いきや、恋愛は想像以上に面倒くさい。

感情のぶつかり方が生々しくて、いい意味で裏切られます。

でも、この面倒くささこそ『涼風』。大和と涼風にヤキモキしながら、なんだかんだ続きが気になってしまいます。

瀬尾公治作品でおなじみの優柔不断な主人公像が、長所も短所も隠さず前面に出ている作品。

ツンデレヒロイン・涼風の存在感

やっぱりこの作品を語るなら、タイトルにもなっている朝比奈涼風は外せません。

美人でスポーツ万能。それだけなら王道ヒロインですが、とにかく気が強くて素直じゃない。

今ならツンデレの一言で片づけられそうですが、大和に対しても「そこまで冷たくしなくても…」と思うことが何度もあります(笑)。

態度も言葉もトゲだらけで、正直めんどくさい。でも、だからこそふとした瞬間に見せる弱さや迷いが強烈に印象に残ります。

過去の恋愛もあって簡単には大和を受け入れられないし、好きになってからも素直になれない。完璧なヒロインではなく、感情が安定しないところまで含めて涼風の魅力だと思います。

高校生の恋愛のリアルな温度感と攻めたラブコメ構成

この作品の恋愛は、とにかく理想化されていないのが印象的。

好きだけど言えない、勢いで行動して後悔する、相手の気持ちが分からずすれ違う。「高校生ならこんなことありそう」と思える場面が多い。その分、未熟さにイライラする人もいると思いますが、そこも含めて妙にリアルなんですよね。

瀬尾公治本人も、読者を飽きさせない展開をとにかく意識したと語っていますが、それがよく分かる構成が特徴です。

そんな青春ラブコメでありながら、片思いに三角関係、告白、交際、喧嘩、別れ、復縁と、その先の恋愛までどんどん描いていきます。付き合えたと思ったら、そこからまた面倒くさい。笑

正ヒロイン以外と付き合う展開や、終盤から最終回へ向かってのテーマなど、当時の少年漫画としてはかなり挑戦的な内容だったと思います。

良くも悪くも、安全運転をしないラブコメ。

陸上競技を通じた青春と成長描写

物語前半は陸上競技の描写もけっこう丁寧に描かれていて面白いです。

高跳びに本気で取り組む涼風に対して、大和は短距離で思わぬ才能を発揮。

主人公の大和が走る理由を探しながら、ライバルや仲間と向き合っていく流れや、努力しても結果が出ない焦り、気持ちが空回りする感じまでちゃんと描かれていて、恋愛一辺倒ではなく、普通にスポーツ漫画として楽しめます。

後半に入ると、陸上競技の比重は一気に下がり、恋愛が物語の中心になるので、そこはちょっと残念だったかな。

こんな人におすすめ

ツンデレヒロインが好きな人や、多少イライラしながらも感情の揺れを楽しめる人には向いています。逆に、登場人物の未熟さに耐えられない人には少ししんどいかもしれません。

そして『君のいる町』『風夏』などの瀬尾公治作品が好きならぜひ

後の作品でおなじみとなる恋愛のすれ違いや人間関係のこじれっぷりを見ると、「ここから始まっていたのか」とニヤニヤできます。

当時としては攻めすぎた表現
途中で萌果と付き合ったり、ようやく涼風と付き合ったと思ったら別れたりと、恋愛関係がとにかく安定しません。今見るとそこまで珍しく感じないかもしれませんが、当時の少年誌ラブコメとしてはだいぶ異質な展開だったと思います。

『涼風』の評価が大きく分かれるのは、やっぱり終盤でしょう。高校生の恋愛と陸上を追っていたはずが、大和と涼風が一線を越え、まさかの妊娠発覚

いや、そこまで描くのかと。

陸上部を舞台にした高校生の爽やかな恋愛から始まって、最終的に妊娠まで描く。なかなかの振り幅です。

当時の少年漫画、それも『週刊少年マガジン』のラブコメでここまで踏み込んだことを考えると、賛否はあってもかなり攻めた展開だったと思います。

妊娠・結婚まで描いたラストをどう見るか
妊娠を軸にした展開は賛否が大きく分かれるところですが、終盤~最終回にかけての流れは強烈に印象に残っています。

妊娠から結婚までの流れはさすがにちょっと急でしたけどね。

ただ、大和が逃げなかったところは好きです。

ここまで散々「大和、お前なぁ…」と思う場面もありましたが、最後は涼風と向き合って、自分で責任を取る道を選ぶ。完璧な主人公ではなかったからこそ、最後に腹をくくった姿にはちゃんと成長を感じました。

勢いで突っ走る若さや無計画さも含めて、この作品らしい終盤だと思いました。

今にして思えば、少年漫画のラブコメとしては相当攻めてた作品ですよね。

類似作品 こちらもオススメ!

同じ時期にマガジンで連載していた漫画家だと、ハーレム要素の元祖ともいえる『ラブひな』と、学園ラブコメを広げた『魔法先生ネギま!』(赤松健。少年ジャンプだと同時期だと『いちご100%』(河下水希)かな?これらと比べると『涼風』は異色の立ち位置だと思います。

あとがき

改めて振り返ると『涼風』って、思っていた以上に攻めたラブコメだったんですね。

『君のいる町』や『風夏』を読んでから戻ってくると、「ああ、瀬尾公治の恋愛漫画ってここから始まってたんだな」と思わされます。

すれ違って、こじれて、やっとくっついたと思ったらまた何か起きる。後の瀬尾公治作品につながる要素がすでにてんこ盛り(笑)。

今読むとツッコミたくなるところもありますが、それも含めて妙に記憶に残る作品でした。

瀬尾公治のおすすめ漫画作品ランキングもチェック!

『涼風』を読んだあとは、瀬尾公治のほかの漫画と読み比べてみるのも面白いです。

恋愛のすれ違いや魅力的なヒロインといった共通点がありながら、作品ごとに舞台や恋愛の見せ方はさまざま。

特に『君のいる町』『風夏』など、世界観につながりのある作品と併せて読むと、思わぬ発見もあってさらに楽しめますよ。

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