個性的でユニークなテーマを扱う漫画家、「松橋犬輔(まつはしいぬすけ)」
法廷や美大予備校、少年犯罪など、実体験や徹底的なリサーチをベースにして、普通の漫画ではなかなか描かれないテーマを大胆に扱う漫画家です。
「こんなテーマが漫画になるなんて!」と読者に新しい視点を提供してくれる作品たち。
「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」では裁判傍聴のリアルな緊張感を描き、「君とガッタメラータ!」では美術予備校を舞台に青春の葛藤を描写。そして「神様、キサマを殺したい。」では、普通ではありえない濃いキャラクター設定で話題を呼びました。
そんな驚きと感動が詰まった、松橋犬輔のおすすめ漫画作品をランキング形式でご紹介します!
2位 裁判長!ぼくの弟懲役4年でどうすか(さいばんちょう!ぼくのおとうとちょうえきよねんでどうすか)
(あらすじ・作品解説)
北尾トロ氏原作の「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」をコミック連載していた作者。
ある時、仕事中に母から電話がかかってきます。
それは「弟が逮捕された」という衝撃的な内容でした。
裁判傍聴記を描いていた作者が「自身の身内の裁判」の傍聴記を描くに至る物語です。
(おすすめポイント・感想・レビュー)
犯罪者側家族の心情が赤裸々に描かれているのがみどころ。
弟は、ネットの掲示板で未成年の少女たちに援助交際を斡旋していました。
そのことに対する罪の意識が軽いところも描かれています。
面会室で作者と対面する時に、思わず笑ってしまう弟にはちょっと呆れちゃいました。家族がどんな気持ちだと思ってるんだよ……。
印象的だったのは、兄である作者が「罪を軽くしてほしくない」と思っているところ。
しっかりと裁いて罪を償ってほしいと考えている点は、兄としてのひとつの愛の形なのかなって思いました。
■ 特に印象に残っているキャラやシーン、セリフ
母親が証人として証言台に立つシーンが痛々しかったです。
「本当は優しい子なんです」とは、罪を犯した者の家族が誰もが言うこと。
弟が母にやってくれたことを切々と語る母に対して、「それって当たり前のことだよ」と返す裁判長の厳しさが印象的でした
■ どんな人にこの作品がオススメか
基礎となる作品「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」を読んでいた方ならなお面白く読めるかと思います。
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1位 裁判長!ここは懲役4年でどうすか(さいばんちょう!ここはちょうえきよねんでどうすか)
あらすじ・作品解説
『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』は、漫画家、松橋犬輔による裁判傍聴マンガ。
主人公の北尾太郎(きたおたろう)がふとした興味から裁判傍聴を始めることになる。
殺人、強姦、詐欺、離婚、DVなど、多様な事件の裁判を通じて、他人の赤裸々な人生が垣間見る北尾。
時には被告に同情し、時には検事の論理に頷く北尾は、次第に法廷を舞台にした、映画やドラマでは味わえないリアルな人間模様に魅了されていく。
松橋犬輔が作画を手掛け、北尾トロのエッセイを原作とした本作は、2007年から2010年まで『週刊コミックバンチ』で連載され、その後『月刊コミックゼノン』に場を移して続編が連載。
『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』は、2009年には向井理主演でテレビドラマ『傍聴マニア09〜裁判長!ここは懲役4年でどうすか〜』が放送され、2010年には設楽統(バナナマン)主演で映画化。また、2012年と2016年には舞台化もされ、幅広いメディア展開が行われた。
ちなみに当時、裁判傍聴にハマっていたという千原ジュニアも漫画の作中に本人として登場している。
(原作:北尾トロ)
おすすめポイント・感想・レビュー
裁判傍聴がこんなに面白いとは!?
『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』は、裁判傍聴をテーマにした他に類を見ない漫画作品です。
検察側でも弁護側でもなく、一切の責務や使命感を持たない第三者の「傍聴人」の視点から、裁判所のリアルな雰囲気や事件の裏側を描いています。
傍聴人の視点で進む裁判エンタメ
裁判所や裁判を完全にエンタメとして描いている稀有な作品です。
モノローグ(心の声)が描かれるのは基本的に傍聴人のみで、その傍聴人の主観を元に物語が進むので、主人公を始めとした傍聴人の感覚に共感できないと楽しみにくい部分はあるかもしれません。
しかし、泣ける話からくだらない裁判まで、さまざまな事件が取り上げられており、傍聴人目線で描くことで、裁判傍聴の面白さをうまく表現していて、「裁判傍聴って意外と面白いんだよ」という原作者の思いがしっかり伝わってきます。
主人公=傍聴人という独特な立ち位置
主人公の北尾太郎は、事件とは一切無関係な「傍聴人」という第三者の立場。
裁判の様子は裁判官や弁護士、被告人などの心情は描かれず、全てが傍聴人の想像やモノローグを通して展開します。
事実としてあるのは、起こった事件のあらましや、登場人物たちの発言、そして裁判官が下す判決のみ。
被告人や原告の心情は語られないので、決してそれぞれの事件の真実が明らかになるわけではないというのも、この作品をリアルに感じる要因のひとつかもしれません。
リアルな反面、共感が難しい?
主人公=原作者だから仕方ないのかもしれないけれど、個人的には漫画版ではもう少し、主人公にスポットをあてて欲しかったかな?
北尾太郎の生活やバックボーンが語られることがほとんどなくて、最後まで無関係な傍聴人の立場だったことがちょっと残念。
いい部分でもあり、悪い部分でもあるので難しいですけど。
裁判の様々な事例を紹介していく作品としては新しくて面白い漫画でした。人間ドラマとしては映画版の方が面白かった。
こんな人におすすめ
ちょうど裁判員制度の話題で盛り上がっていた波に乗ったのもあって、ニッチな題材の割にヒットした作品でした。
誰でも行けると言われてもなかなか、傍聴する機会がない裁判の雰囲気をリアルに感じられます。
主人公の感覚と合うかどうかで楽しめる度合いが変わる部分はありますが、裁判という舞台で繰り広げられる多様な物語は一見の価値ありです。 裁判傍聴に興味のある人におすすめ。
痴漢事件では、主人公が完全に犯人側に共感していたり、顔だけで犯罪を犯してそうだと判断したりと、本来口にするだけで不謹慎だと炎上しそうな偏った意見もモノローグとして描写されています。
主人公(原作者)が男性というのもあって、男性目線の感想が多いため、不快に思う人もいるかもしれない。
けど、そんな「リアルな傍聴人の心の声」がより裁判に現実感を与えることに繋がってるのかなとも思います。
「言いなりロボット」の回を始め、泣ける話から珍事件まで序盤のエピソードは特に面白く、裁判傍聴の魅力が詰まってます。
ただ、後半は1つの事件を深堀りするスタイルではなく、まだ紹介していない珍しい事件や事例を、紹介するだけみたいな回が多かったのが残念だったな。
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読み進めるうちに「一度くらいは傍聴に行ってみたい」という気持ちにさせてくれます。
あとがき
あなたがランキング1位に選ぶおすすめ作品はどの漫画ですか?
『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』を始めとして、倫理的に際どい作品も多いね。
「こんな時代にこういう作品を書くのは挑戦的」「ハラハラする!」という称賛の声から、「こんなの書くのやめろ!」「残酷なだけで何が面白いの?」など否定の声まで賛否両論を巻き起こした『神様、キサマを殺したい。』
各方面から話題になった作品でしたが、作者の松橋犬輔が胆石療養を患って休載となって以来もう何年も連載が開始されないまま・・・。
続きが気になるんだけど、今はどういう状態なんだろう?
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