作品の完成度がとにかく高い漫画家といえば、岩明均(いわあきひとし)です。
派手じゃないのに読み始めると止まらない。気づけば最後まで一気に読まされてしまう。まさにマンガがうまい漫画家。
表情や間の使い方が特徴的で、セリフで全部説明せず、目線やちょっとした顔つきだけで感情を伝えてくる。さらに、静かな会話から突然緊張感のある場面へ切り替える緩急も抜群で、気づけば物語の中にどっぷり入り込んでいます。
そして何よりうまいのが、物語の組み立て方。伏線の置き方、話の転がし方、物語の畳み方。とにかく無駄が少なく、中だるみしない。
短編でも長編でも、「ここまできれいにまとめるか」と感じる完成度の高さがあります。派手なタイプの天才ではないけど、漫画を読めば「この人やっぱり天才だな」と思わされる。
代表作『寄生獣』ではSFホラーの中で人間とは何かを問い、『七夕の国』では民俗や伝承と超能力を組み合わせ、『ヒストリエ』では歴史の中を生きる人間のドラマを描く。根っこに重いテーマを扱っていても、どの作品もきっちりエンタメとして面白く仕上げているのがすごい。
そんな物語の構成力と漫画のうまさを兼ね備えた、岩明均のおすすめ作品をランキング形式で紹介します!
7位 剣の舞(つるぎのまい)

30秒でわかる作品紹介
『剣の舞』は、戦国時代の上州を舞台に、家族を武士に殺された少女・ハルナの復讐を描く歴史漫画です。
仇を討つため剣を学ぼうとするハルナは、新陰流の剣豪・疋田文五郎に弟子入り。剣の腕を磨きながら、再び仇と対峙する機会を待ちます。
実在した剣豪たちの中に架空の少女・ハルナを組み込み、戦国時代の武士と農民、剣術、そして戦の理不尽さを描いた作品。
(雪の峠・剣の舞に収録)
ランキングの理由・推しポイント
第7位は『剣の舞』。
家族を殺されたハルナの物語は、冒頭から最後の終わり方まで含めて悲しいお話。それでも読み終えたときに残るのは胸クソの悪さではなく、「良い漫画を読んだ!」という充実感です。
特に終盤、ハルナが戦うシーンはすごく良かった。岩明均らしい淡々とした残酷さも効いています。
同じ時代劇でも、『雪の峠』が政治や駆け引きで読ませる変化球なら、『剣の舞』は仇討ちと剣戟を軸にした王道寄りの作品。アクションとドラマを前面に出した印象です。
『雪の峠』がモーニング系で、『剣の舞』はチャンピオン系列。掲載誌の違いも、この作風の違いに影響しているのかな?
王道の仇討ちものとして比較的ストレートなぶん、岩明均作品の中で比べると意外性ではやや弱め。
正直、岩明均の作品は最下位を選ぶほうが難しいんですけど、同じ日本を舞台にした時代劇だと『雪の峠』が個人的には良すぎました。
6位 風子のいる店(ふうこのいるみせ)
30秒でわかる作品紹介
『風子のいる店』は、吃音のため人とうまく話せない高校生・風子の成長を描いた人間ドラマです。
自分を変えたいと喫茶店「ロドス」でアルバイトを始めた風子。最初は失敗することも多いものの、マスターや個性豊かなお客さんたちとの交流を通して、少しずつ成長していきます。
前半は喫茶店を舞台にした一話完結型のエピソードが多く、中盤以降は高校生活を通した風子の成長物語へ。後の岩明均作品とはかなり毛色の違う初連載作品です。
ランキングの理由・推しポイント
第6位は『風子のいる店』。
『寄生獣』以降の岩明均を知っていると、「本当に同じ漫画家?」と思うくらい作風が違います。人間の断面図も出てこない、読み手に優しい漫画です。笑
初連載ということもあって絵柄など荒削りな部分はありますが、風子の成長や周囲の人たちとの人間ドラマはしっかり描かれていて、ストーリーテリングのうまさはこの頃から健在。
ちなみに岩明均本人も、キャラクターを先に作ってから物語を組み立てる本作の描き方は、自分には合わず苦労したと振り返っています。
その反省が次作『寄生獣』に生かされたというから、漫画家として自分に合った描き方を模索していた時期だったんでしょうね。
他の作品とは違うテイストが味わえるので、岩明均好きならぜひ読んでほしい作品。ただ、残念ながら電子化されてないんですよね。『雪の峠・剣の舞』もそうですが、岩明均作品は一部電子化されていないものがあり、現在は入手する手段も限られています。人におすすめしづらいのが惜しいところ。
前はブックオフの100円コーナーでも見かけたのに、今はめちゃくちゃ高くなっちゃってるしね。電子化してない漫画の価格高騰は異常。
…っていうか、他の作品が異色すぎて、逆にこれが異色作扱いになっちゃうのが岩明均作品らしい。笑
5位 ヘウレーカ
30秒でわかる作品紹介
『ヘウレーカ』は、第二次ポエニ戦争下の古代シチリア・シラクサを舞台にした歴史漫画です。
ローマとカルタゴの争いに巻き込まれた青年・ダミッポスは、ローマ人の恋人・クラウディアとともに天才数学者アルキメデスのもとへ。やがてローマ軍がシラクサへ侵攻し、アルキメデスが生み出した数々の兵器がその威力を発揮します。
史実とフィクションを織り交ぜながら、戦争とそこに生きる人々を全1巻で描き切った歴史作品です。
ランキングの理由・推しポイント
第5位は『ヘウレーカ』。
なんといっても見どころは、アルキメデスが生み出したトンデモ兵器の数々。
- 蒸気機関による丸石の高速射出機
- 城壁に登った人間を一瞬で輪切りにする自動鋸(のこぎり)
- 戦艦を釣り上げる巨大クレーン
などなど、「紀元前にこんなのあり!?」と思うような、明らかなオーパーツ。
ローマ兵がかわいそうだ…。笑
実際にアルキメデスがどこまでこんな兵器を作ったのかは置いといて、人間を輪切りにすることに掛けては日本屈指の画力を誇る岩明均。
『ヘウレーカ』でも、その才能を遺憾なく発揮してます。笑
ちなみに『ヘウレーカ』と『ヒストリエ』は、どちらも古代の地中海周辺を舞台に、史実とフィクションを組み合わせて描いた歴史漫画。作品の雰囲気もかなり近いです。
『ヘウレーカ』の世界観が好きなら、『ヒストリエ』も間違いなくおすすめ。
ただし、時代も場所も違うので物語上の繋がりはありません。
単体作品としてしっかり面白い!全1巻でサクッと読めるのも魅力。岩明均の歴史漫画を気軽に読んでみたい人にもおすすめです。
無料立ち読み
4位 雪の峠(ゆきのとうげ)

30秒でわかる作品紹介
『雪の峠』は、関ヶ原の戦い後、出羽国へ移封された佐竹家を描く歴史漫画です。
新たな領地で城を築くことになった佐竹家。しかし、どこに城を置くべきかを巡り、若き当主・佐竹義宣と渋江内膳らの考えに、戦国を生き抜いてきた老臣たちが反発します。
派手な合戦ではなく、築城候補地を巡る議論や政治的な駆け引きを中心に、世代間の対立を描いた歴史作品です。
(『雪の峠・剣の舞』に収録)
ランキングの理由・推しポイント
第4位は『雪の峠』。
現代はもちろん、『ヒストリエ』のような西洋史も、日本史物も意外と合うなぁ。岩明均のシンプルな絵は時代を選ばないのかもしれない。
ようは「どこに城を建てるか」という話なんだけど、それがこんなに面白い!
派手な合戦が続くわけでもなく、中心となるのは佐竹家の家臣たちによる議論と駆け引き。それなのにページをめくるたびにどんどん引き込まれます。
特にうまいのが、新しい時代を見据える渋江内膳と、戦国を生き抜いてきた老臣たちの対立。単純に「若者が正しくて老人が古い」で終わらせず、それぞれの立場や意地、嫉妬までしっかり描いてくる。
個人的には同時収録の『剣の舞』よりこちらの方が面白かった。
実在の剣豪に架空の少女・ハルナを組み合わせた『剣の舞』に対して、こちらは佐竹家の出羽転封や築城という史実が物語の大きな骨格になっています。
もちろん細かな駆け引きなどにはフィクションも含まれますが、実際の歴史をここまで漫画として面白くできるのがすごい。
派手さはないのに最後まで読ませる、完成度の高いおすすめ短編です。
3位 ヒストリエ
30秒でわかる作品紹介
『ヒストリエ』は、後にアレクサンドロス大王の書記官となる実在の人物・エウメネスの生涯を描いた歴史漫画です。
紀元前4世紀の古代ギリシアを舞台に、幼い頃から優れた知識と観察力を持つエウメネスが、数奇な運命に翻弄されながら各地を渡り歩き、やがてマケドニア王国と関わっていきます。
史実をベースに大胆なフィクションを組み込み、戦争や政治だけでなく、当時の文化や暮らしまで細かく描いています。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞、さらに講談社漫画賞まで、数々の賞を受賞した、岩明均の長編歴史作品です。
ランキングの理由・推しポイント
第3位は『ヒストリエ』。
『ヘウレーカ』で感触つかんで、西洋史で長期連載にってことだったのかな?
SFがめちゃめちゃ面白い漫画家がまさかの4作続けての歴史モノ。
普通ならがっかりして、早くいつもの描けよと、言いたくなるところだけど、これもめちゃくちゃに面白いから困る。
戦争や政治だけでなく、当時の文化や生活まで細かく描かれているのが魅力。
中でも印象的なのが、作中でエウメネスが考案する「マケドニア将棋」。岩明均が実際にルールまで考案していて、7巻限定版では本当に遊べる盤と駒までついた付録になっていました。
そして、やっぱりうまいのが人間の描き方。
シンプルな絵なのに、目や表情で人の底にある感情や残酷さが妙に伝わってくる。スキタイ人の残虐さとか、「こいつならそういうことやりそう」と思わせる怖さがあるんですよね。
問題は、とにかく続きが出ないこと。
綿密な取材をしていることに加え、基本的にアシスタントを使わず一人で描き、さらに単行本になる時には大幅に加筆修正を加えています。
完結したらもう一度最初からまとめて読みたいけど…。今は完結を祈るのみ!
ただ、個人的に上位2作品があまりにも好きすぎるので、完結したとしても『ヒストリエ』の3位は固定かなぁ。
今だけ3巻まで無料(9/20まで)
2位 七夕の国(たなばたのくに)
30秒でわかる作品紹介
『七夕の国』は、ちょっとした超能力を持つ大学生・南丸洋二、通称ナン丸を主人公にしたSFミステリーです。
物体に小さな穴を開けられるという、なんとも微妙な能力を持つナン丸。ある日、民俗学教授・丸神から呼び出されますが、その教授は「丸神の里」へ向かったまま行方不明になっていました。
ナン丸の能力や一族に伝わる伝承の秘密が少しずつ明らかになっていく、民俗学とSFを融合させた全4巻の作品です。
ランキングの理由・推しポイント
第2位は『七夕の国』。
岩明均の中で隠れた名作といったら『寄生獣』ではなくこれですよ。
短い巻数だからといって、よくあるヒット作の後の打ち切り漫画だと思ったら大間違い!個人的には『寄生獣』にも負けないくらい好きなSFミステリーです。
何がいいって、「歴史」「民俗学」「超能力」「ミステリー」「SF」といろんな要素が入っているのに、全4巻できっちりまとめているところ。
一族に伝わる伝承や風習、土着信仰といった、いかにも民俗学っぽい世界にSFを落とし込んでいて、荒唐無稽な設定なのに妙なリアリティがあるんですよね。
そして主人公のナン丸がまたいい。
岩明均作品の主人公の中でもかなり普通。超能力はあるけど、脳天気でどこか頼りない。でも、このナン丸の緩さが決して明るくない物語をちょうどよく読みやすくしています。
序盤に散りばめられた謎が少しずつ繋がり、後半になるほど物語が加速していきます。
未だに定期的に読み返したくなる作品。ランキング1位でもいいくらい好きなんですが……相手が『寄生獣』じゃあしょうがない。
無料立ち読み
1位 寄生獣(きせいじゅう)
30秒でわかる作品紹介
『寄生獣』は、人間を捕食する謎の寄生生物との戦いと共生を描いたSFホラー漫画です。
ある日、謎の寄生生物の一体が、高校生・泉新一の体に侵入しますが、脳の乗っ取りに失敗し右手に定着。自らを「ミギー」と名乗り、奇妙な共同生活が始まります。
人間社会に紛れ込んだパラサイトたちとの戦いや、新一とミギーの関係を軸に、「人間とは何か」「命とは何か」というテーマまで描き切った、全10巻のSF漫画です。
ランキングの理由・推しポイント
第1位は『寄生獣』。
岩明均のおすすめ漫画1位は、やっぱりこれしかない。
SFホラー、サスペンス、バトル、人間ドラマ。さらに「命とは何か」「人間とは何か」というテーマまで詰め込んで、それを全10巻で中だるみなく描き切っている。何度読み返しても、この完成度はすごいです。
そして『寄生獣』を語るなら、やっぱりミギー。
感情や倫理観を持たず、徹底して合理的。それなのに新一とのやり取りを見ているうちに、あれだけ不気味だった存在がどんどんかわいく見えてくる。こんなに愛着の持てるバケモノは他にいません。笑
シンプルなのに説得力のある絵、目や表情で感情を伝える画力、余計な説明をしないセリフ、コマとコマの「間」、最低限の線で見せるスピード感あるバトル。
描きすぎない。説明しすぎない。でも、ちゃんと伝わる。
学生の頃は寄生生物の怖さやバトルに夢中になり、大人になって読み返すと親子の話や人間社会へのメッセージが刺さる。読む年齢によって面白いところまで変わってきます。
絵からストーリー、キャラクター、漫画表現まで、岩明均の漫画のうまさがこれでもかと詰め込まれた作品。
「10巻くらいで完結してるおすすめ漫画は?」と聞かれたら、脳を介することなく反射で『寄生獣』と答えられるレベル。笑
ホラー好きでも、アクション好きでも、SF好きでもなく、とにかく漫画好きなら一度は読んでほしい。
今だけ3巻まで無料(9/20まで)
あとがき
あなたがランキング1位に選ぶおすすめ作品はどの漫画ですか?
ランキングまとめて見ると、やっぱり岩明均作品にハズレ無しですね。短編から長編まで全て面白い。
1位はやっぱり『寄生獣』。血なまぐさい戦闘シーンをあえて淡々と見せる一方で、感情が大きく動く場面では目を超クローズアップさせる。
無機質でシンプルなあの絵柄が、作風とも見事にマッチしてました。
デビューからずっとコンスタントに連載を続けてる割には、作品数は少ないけど、そのどれもが評価の高い漫画ばかり。
一般知名度はいまいちだけど、読んだら面白い隠れた名作の宝庫です。
…というか、こんだけ多くの人が隠れた名作って紹介してる時点で、漫画好きの中では全然隠れてないよな。笑
少ないとは言いながらも、デビューからほぼアシスタントを使わず、一人で描いててこの作品群はすごいですけどね。
発表する作品がどれも面白すぎるからこそ、早く先が読みたいという欲が出てきちゃう。
もっとたくさんの作品読みたいんだけどなぁ…って思ってたところに、『アフタヌーン』に掲載された岩明均のメッセージは衝撃だったな。
長期休載に入るという告知に加えて、全速力で描いても1巻出すのに5年近くかかっている状況では、『ヒストリエ』が生きているうちには完結できそうにないと受け取れるような内容でした。
しかも最後の締めが「戻ってきます」ではなく、「今までありがとうございました」だったのも悲しかった。休載は多かったものの、まさか『ヒストリエ』が未完で終わる可能性があるとは思ってもみなかったから。
ただ、そこで終わらないのがすごい。その後の講談社漫画賞の受賞コメントで、紙とペンでは完結が難しいと判断した岩明均が、今度はタブレットでの作画を練習しているというんです。
現在は40年以上続けてきた紙とペンからデジタル作画に切り替え、物語の完結を目指しているとのこと。64歳にしてマンガスクールでデジタル技術を学ぶという、ベテラン漫画家とは思えない行動力に驚きしかありません。
アナログの作画の美しさも魅力の漫画家だったので心配ですが、もう連載ペースは気にしません。
無理せず描き続けてもらって、いつかエウメネスの物語を最後まで読ませてもらえたら。それだけで十分です。
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とにかくたくさんの漫画を読みたい方のために、70~90%OFFで購入する方法や、無料で読める作品など、漫画を安く読む方法を紹介しているのでチェックしてみてください。

