『連続漫画小説 あさドラ!』の感想・レビュー|少女の一代記×怪獣ミステリー【浦沢直樹】

あさドラ!

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『YAWARA!』『MONSTER』『20世紀少年』など、ジャンルの異なる作品を次々と生み出してきた漫画家・浦沢直樹(うらさわなおき)。

そんな浦沢直樹が、昭和を生きる一人の少女の人生を描いた作品が『連続漫画小説 あさドラ!(れんぞくまんがしょうせつ あさドラ)』です。

伊勢湾台風や東京オリンピックといった実際の出来事を背景に、アサの成長や人との出会い、さらに巨大UMAをめぐる謎まで絡んでいく壮大な物語。

浦沢直樹版の「朝ドラ」は、やっぱり普通の朝ドラでは終わりません。笑

懐かしいのに先がまったく読めない、『あさドラ!』ならではの魅力を紹介します。

あらすじ

物語は2020年、東京オリンピックの直前から始まる。プロローグで描かれる現代の混乱から、時代は1959年の名古屋へと遡っていく。

伊勢湾台風という未曽有の大災害の中、家族と離ればなれになってしまった12歳の少女・浅田アサは、混乱の中で元軍人の春日と出会い、激しい台風に巻き込まれてしまう。

一夜明けて二人が目にしたのは、水に沈んだ町と助けを待つ大勢の人々だった。アサは春日とともに手に入れた飛行機で彼女の家があった地域に向かうと、そこには謎の巨大生物(UMA)の足跡が残されていた…。

これはただの災害ではない、何か大きな陰謀や謎が隠されている――。

家族思いで行動力にあふれるアサが戦後の日本をたくましく生きながら成長し、その人生がやがて長い年月にわたる大きな謎と交差していく物語である。

作品解説

『あさドラ!』は、漫画家・浦沢直樹が描く、戦後日本を舞台にした成長と歴史の物語。ヒューマンドラマとミステリーを融合した作品である。「連続漫画小説」と銘打たれ、タイトルはNHKの連続テレビ小説、いわゆる「朝ドラ」をもじったもの。

戦後昭和を生きる浅田アサの一代記を軸に、伊勢湾台風や東京オリンピックなど実際の出来事と謎の巨大生物をめぐる物語を重ねている。戦後から現代まで、日本の変化を織り交ぜながら展開する壮大なストーリーが特徴である。

家族や友情、夢を描く身近な人間ドラマと怪獣映画を思わせる壮大な展開が同居し、時代の変化とともに複数の人物や謎がつながっていく構成も魅力。少女の成長物語と先の読めないミステリーを一つにした、浦沢直樹作品らしいスケール感を味わえる一作である。

『ビッグコミックスピリッツ』に連載された本作は、浦沢作品らしい緻密な描写と予想外の展開が評価され、2021年にはイタリアのLucca Comics Awardsで「ベストシリーズ」を受賞。作中の楽曲「It’s Because I Love You」を使ったミュージックビデオも公開されるなど、作品の世界観を広げている。

昭和のノスタルジーと怪獣を絡めた、少女の人生を追う壮大な物語!

おすすめポイント・感想・レビュー

『連続漫画小説 あさドラ!』の名前の通り、一人の女性の一代記のような、まさに浦沢直樹版の「朝ドラ」といった作品!

名古屋を舞台に描かれたということもあり、名古屋弁の会話や、時代背景が生き生きと描かれていて、まるで昭和の街にタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。

全体的に懐かしさが漂う昭和を舞台にしながら、どこか新しさを感じさせる空気感。そこから予想もしない展開に持っていくストーリーテリングもさすが。

昭和と未来を繋ぐ壮大な構想

相変わらず、風呂敷の広げ方や伏線の散りばめ方が天才的!

1巻を読んだ時点で、これはすごい名作になるんじゃないか?というワクワク感が止まりません!

物語のプロローグでは2020年の東京が舞台となり、そこから1959年に戻るという構成も『20世紀少年』を彷彿とさせてワクワクします。

昭和の懐かしさを感じさせるリアルな空気感。そこに突然現れる巨大UMAの影。

もう先が気になって仕方がありません!

大災害を背景にした冒険と人間ドラマ

今までの浦沢直樹作品を凝縮したような、個性豊かなキャラクターたちも見どころ。

リアルな災害描写とともに描かれるアサの健気な姿。元パイロットの春日晴夫と協力して人を救うエピソードなど、感動的なシーンも多いです。

特に印象に残ったのが、飛行機から被災者へおにぎりを届けるエピソード。自分だって家族の安否が分からない状況なのに、人を助けようと動けるアサの健気さにはグッときます。

巨大UMAの謎だけでなく、こうした人と人とのつながりをしっかり描いてくれるのも『あさドラ!』の魅力です。

時代とともに成長していくアサ

そして『あさドラ!』のもうひとつの魅力が、時代とともに成長していくアサの姿です。

物語開始時は12歳だったアサですが、時代が進むにつれて17歳、21歳と成長し、年齢だけでなく、考え方や背負うものも少しずつ変わっていきます。

飛行機との出会いから始まり、さまざまな人と出会いながら自分の人生を切り開いていくアサ。

作中の時代が移り変わるとともに、登場人物たちとの関係性や立場も変化していき、アメリカ人の青年・リバーとの出会いなど、大人になったからこそのドラマも描かれていきます。

巨大UMAの正体も気になりますが、「アサは最終的にどんな女性になるんだろう?」という部分も、いつの間にか同じくらい気になってくるんですよね。

今後の期待ポイント・考察

まるで「朝ドラ+シン・ゴジラ」のような展開に、この先どうなるのか全く読めない『あさドラ!』

  • 巨大UMAの正体が物語全体にどう影響するのか。
  • 2020年の東京オリンピックと1959年の名古屋がどのように繋がるのか。
  • ファンタジー要素や超展開がどの程度物語に絡むのか。

などなど気になる要素が盛りだくさん!

災害の描写だけでなく、時代を超えて紡がれる人間関係や謎の伏線。その全てがどのように繋がっていくのか、読むほどに期待が高まります!

浦沢直樹の描く戦後日本が、2020年にどのように向かっていくのか、もしかすると『20世紀少年』のように、そこですら最終話ではなく、中盤のポイントに過ぎないのかもしれません。

何よりも尻すぼみならず、ラストまで面白いことを切に願っています。

こんな人におすすめ

昭和の街並みや当時の空気感が好きな人にはおすすめです。

怪獣SFが好きな人にも合いますが、怪獣同士が派手に戦う作品を期待すると少し違うかも。朝ドラ的な昭和の人情ドラマの裏で、巨大な存在をめぐる謎や、それに巻き込まれた人々の人生を楽しむタイプの作品です。

もちろん、今までの浦沢直樹作品を読んできた方なら『あさドラ!』も文句なくおすすめ!

今作も一度読み始めたら最後。続きを読まずにはいられない求心力のある作品になっています。

序盤では12歳だったアサが成長し、自分の人生をしっかり切り開いていくのがいいですね。

特に面白かったのが、1964年の東京オリンピックという誰もが知る歴史の裏側で、アサたちが巨大なアレと対峙している構図。

世間がオリンピックに熱狂している一方で、誰にも知られない戦いがあったという見せ方にはワクワクしました。

怪獣の謎を追う物語でありながら、読み進めるほどアサがどんな人生を歩むのかの方も気になってくる。この二本柱が『あさドラ!』の面白いところです。

クレジットに長崎尚志の名前がないのも新鮮ですね。

類似作品 こちらもオススメ!

「昭和を生きる少女の一代記×怪獣」という時点で、正直かなり唯一無二。完全に似た作品を探すのは難しいです。
現実社会と怪獣をリアル寄りに描く『怪獣自衛隊』(井上淳哉)、怪獣と人間の関係に焦点を当てた『大怪獣ゲァーチマ』(KENT)、怪獣バトルなら『怪獣8号』(松本直也)などが近いところ。
戦後の時代と女性の成長という視点なら、『フイチン再見!』(村上もとか)や『スインギンドラゴンタイガーブギ』(灰田高鴻)もおすすめです。

あとがき

内容知らずに、そのまんまタイトルだけで、浦沢直樹が描く朝ドラ的な話だと思って読み始めたので、まさに「思ってたんと違う!」状態でした。笑

最初は昭和を生きる少女の一代記かと思っていたら、伊勢湾台風に飛行機、東京オリンピック、巨大UMAまで出てきて、気づけばとんでもないスケールになっています。

これだけ詰め込んでいるのに、ちゃんと一つの物語として読ませてしまうのはさすが浦沢直樹ですね。

なんなら、このまま浦沢直樹原作で連続テレビ小説としてNHKでドラマ化してほしいくらい。笑

昭和の人情ドラマが好きな人にも、『20世紀少年』のように先の読めないミステリーが好きな人にもおすすめできる作品です。

まだ読んでいない方は、まず1巻の「なんだこれ、どうなるんだ?」というワクワク感を味わってみてください。

浦沢直樹のおすすめ漫画作品ランキングもチェック!

『あさドラ!』を読んで改めて感じるのが、浦沢直樹作品のジャンルの広さです。

スポーツからミステリー、サスペンス、SFまで、本当に振り幅がすごい。

ほかの作品も含めておすすめ順に紹介しているので、『あさドラ!』から浦沢直樹作品に興味を持った方は、ぜひ次に読む一冊を探してみてください。

→ 浦沢直樹のおすすめ漫画作品ランキングはこちら

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