『GIGANT』の感想・レビュー|AV女優が巨大化!?規格外のSFラブストーリー【奥浩哉】

GIGANT

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『GANTZ』や『いぬやしき』で知られる奥浩哉(おくひろや)が、巨大化、未来人、AI、怪物、恋愛まで、描きたいものを思い切り詰め込んだ『GIGANT(ギガント)』。

一見すると、かなり奇抜で予測不能なSF作品です。しかし、どれだけ物語のスケールが広がっても、その中心にあるのはAV女優・パピコと高校生・横山田零の純愛。

派手なアクションと先の読めない展開を楽しみながら、最後には王道のラブストーリーとして心に残る作品です。

この記事では、『GIGANT』の魅力や見どころ、実際に読んだ感想を紹介します。

あらすじ

『GIGANT』は、映画監督を志す高校生・横山田零が、憧れのAV女優・パピコと偶然出会うことから始まるSF作品である。

零との交流を深める中で、ある日、パピコは人間離れした巨大化能力を手に入れることになり、二人の日常は一変する。

その頃からネット上では、投票で選ばれた出来事が現実になる謎のサイト「ETE(Enjoy the End)」が急速に広まり始める。

次々と異常現象が発生する中、零とパピコは世界規模へと広がる危機へ巻き込まれていくのだった。

作品解説

『GIGANT』は、漫画家・奥浩哉によるSF・恋愛漫画作品。

高校生とAV女優によるボーイ・ミーツ・ガールを出発点としながら、巨大化能力や人類規模の危機、インターネット社会や現代人の欲望を題材に取り入れ、恋愛漫画の枠を超えた独自の世界観を描いている。

緻密な人物描写と迫力ある作画、映像作品を思わせる演出、先の読めない展開が高く評価され、最後まで一気に読ませる構成力も魅力。

奥浩哉の作品の中でも恋愛とSFが色濃く融合した作品となっている。

「ビッグコミックスペリオール」で連載され、全10巻で完結。アニメ映画化が決定している。

世界を救う、規格外のラブストーリー

おすすめポイント・感想・レビュー

裸のAV女優が巨大化して、世界を脅かす怪物と戦う。説明だけ聞くと、だいぶクセの強そうなSF漫画。

作者の奥浩哉が映像化や他メディアでの展開を一切意識せず、「自分が描きたいものだけを純粋に詰め込んだ」と語っていたとおり、これはさすがに映像化できないだろうなと思っていたので、まさかのアニメ映画化にはびっくりです(笑)

だってヒロインAV女優だし、基本裸だし。笑

でも、読み進めると全然印象が変わる!

エロ、巨大化、未来人、AI、怪物、謎の投票サイトと好き放題やっているように見えて、物語の中心にあるのはパピコと零の恋愛。

本質はかなり王道の純愛ストーリーです。

日常からSFへと広がっていくワクワク

映画監督を夢見る高校生が、憧れのAV女優と偶然出会う。序盤だけなら、少し変わった恋愛漫画にも見えます。

ところが、日常の中に正体不明の機械やETEによる異常現象が少しずつ入り込み、気づけば世界規模の事件へ。

何が本筋なのか分からないのに、なぜか続きが気になってしょうがないこの感じ。奥浩哉は昔っからホントに上手いですよね。

毎巻ラストの引きも絶妙で、あと1巻だけと思って開いたら最後、あっという間に最終巻まで読んでしまいました。

怪獣映画のようなSFアクション

『GANTZ』の武器を使った集団戦とも、『いぬやしき』の高速アクションとも違い、本作の戦闘はどこか昔の怪獣映画っぽいです。

巨大化したパピコと怪物が都市でぶつかり合い、建物が次々と破壊されていく光景はスケール抜群です。

裸のAV女優が巨大怪物と殴り合っているという、かなりふざけた状況なんですけど、そこは奥浩哉の画力のなせる技!

実写映像のような背景と巨大感のある構図、画面の迫力がすごいから普通に見入ってしまいます。

今作ではいろいろな映画やアニメへのオマージュも散りばめられていて、それを探しながら読むのも楽しいポイントです。

最終的にすべてを純愛へ着地させる大胆さ

未来人、AI、人類滅亡、時間移動と、途中からはジャンルの違うSF要素がこれでもかと投入されていきます。

普通なら何の漫画だったのか分からなくなりそうですが、要素てんこ盛りなのに、作品として破綻していない構成力がすごい。

それもこれも、『GIGANT』は最後まで恋愛を物語の中心から動かしていないことが大きいと思います。どれだけSF要素を詰め込んでも、パピコと零のラブストーリーとして一本の筋が通っているんです。

どれだけ物語が大きくなっても、読者が気になるのは世界の行方より、零とパピコがどうなるのか。

全部ひっくるめて一本のボーイ・ミーツ・ガールへ着地させる構成は、かなり大胆でした。

こんな人におすすめ

『GIGANT』は、『GANTZ』系の予測不能なSFが好きだけど、最後は明るい読後感を味わいたい人におすすめ。

奥浩哉作品としては珍しく(と言ったら失礼ですが)、序盤よりも、終盤から最終回に向けての方が世間的評価の高い作品です。

序盤だけで判断せず、ぜひ最終巻まで読んでほしい。完結まで読むと、見え方がかなり変わります。

謎解きより二人はどうなるのかが気になる

ETEがなぜ投票結果を現実にできるのか。未来人は何のために現代へ来たのか。

終盤では、それらの異常現象がAIのソクラテスとプラトンによって引き起こされていたことが明かされます。

『20世紀少年』(浦沢直樹)なんかもそうですが、こういう謎で引っ張る漫画って、どうしても謎が解明した瞬間に評価が落ちがちです。

それまでが面白ければ面白いほど、ハードルも勝手に上がってしまうので、答えが分かった瞬間に、それが予想外でも予想通りでも「なーんだ」となることも多いんですよね。

でも『GIGANT』では、それがない。

パピコは本当に死んだのか、零はもう一度会えるのか。そっちの方が圧倒的に気になるからです。

ゴールを謎の解明ではなく、二人の恋の行方に置いたのはめちゃくちゃうまいと思いました。

最後は零が主人公になる展開に感動

世界を救ったパピコが命を落とし、これで終わりかと思ったら、今度は零が動き始めます。

それまで守られる側だった零が、パピコの残した手掛かりを追い、自分で過去へ向かう決断をする。

ずっとパピコが主人公のような作品でしたが、ここでようやく零が主人公になる。これは熱い!

さらに、新しい世界で映画監督となった零が、パピコとの物語を映画として再現する展開。序盤からあった映画監督志望の設定を、最後にこう使うのか!と完全にやられました。

改変前を覚えていないはずのパピコが、撮影中に記憶を取り戻す流れは、SFとして考えればかなり強引ですが、理屈より先に泣かされるラストでした。

壮大なSF設定を楽しみつつ、パピコと零の恋愛を中心に追える人ほど刺さります。

類似作品 こちらもオススメ!

『All You Need Is Kill』(原作:桜坂洋、構成:竹内良輔、漫画:小畑健)は、時間をめぐる仕掛けを組み込んだSFアクションですが、極限状態で出会った男女のつながりを物語の核にしている点が共通しています。

特別な力を持つ少女と高校生の恋が世界規模の異変へつながり、世界と大切な一人のどちらを選ぶのかを描く『天気の子』(原作:新海誠、漫画:窪田航)や、時間と記憶に翻弄された男女が失われた関係を取り戻そうと再会を目指す『君の名は。』(原作:新海誠、漫画:琴音らんまる)など、アクション要素はないけれど、SFボーイ・ミーツ・ガールとしては、新海誠作品も近い感じがします。

あとがき

いやぁ、奥浩哉のいいとこどりみたいな漫画でした。

相変わらずの序盤の掴みのうまさ、SFのワクワク感。そして、それだけで終わらず、終盤にかけて恋愛漫画としてもどんどん盛り上がっていく。

『GANTZ』や『いぬやしき』のようなSF作品が好きな人にも、『メーテルの気持ち』や『変』などの恋愛要素が強い作品を好む人にも刺さるはず。奥浩哉の両方の魅力を味わえる作品でした。

ここ最近の奥浩哉作品で、ここまで読後感のいい作品は久しぶりかも。

先の読めない展開に引っ張られながら、最後にはパピコと零の恋の行方から目が離せなくなる。なんだかんだ、すごくきれいなラブストーリーだったなと思います。

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同じSFでも作品ごとにカラーがまったく違うので、毎回違った面白さのある漫画家です。

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