静かな題材も熱い少年漫画へ変えてしまう漫画家といえば、「馬上鷹将(もうえたかまさ)」です。
落語からサッカーまで、扱う題材はかなり幅広いのに、どの作品も気づけば夢中になって読んでしまうんですよね。ただ絵がうまいだけじゃない。「続きが気になる」と思わせる漫画力を持った作家です。
その魅力を支えているのが、人物の表情や仕草、そして画面の見せ方です。大きく動くシーンだけでなく、視線や姿勢だけで緊張感や実力差まで伝えてくるのは本当に見事。描き込みすぎず、決める場面でしっかり魅せる。このバランス感覚が、読んでいてとても心地いいんです。
『オレゴラッソ』ではサッカーの迫力あるプレーを勢いよく描き、『あかね噺』では落語をまるでバトル漫画のような熱さで表現しています。さらに『勇者のその後を知ってるか?』のようなコメディ作品まで描けるなど、作品ごとに違う表情を見せてくれるのも馬上鷹将らしいところ。引き出しの多さには驚かされます。
そんな「この人、本当に漫画がうまいな」と読むほどに実感させてくれる、馬上鷹将のおすすめ作品をランキング形式で紹介します!
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1位 あかね噺(あかねばなし)
あらすじ
幼い頃から父・阿良川志ん太(あらかわしんた)の落語に魅了されて育った桜咲朱音(おうさきあかね)は、真打昇進試験で父が理不尽な理由から破門される瞬間を目の当たりにする。
その出来事をきっかけに、自ら噺家となって父の無念を晴らすことを決意した朱音は、志ん太の師匠・阿良川志ぐまへ弟子入りし、落語界最高位である「真打」を目指して歩み始める。
古典落語の技術や表現力を磨きながら、実力者ぞろいの若手噺家たちと競い合い、一席ごとに成長を重ね、自分だけの芸を磨いていくのだった。
作品解説
『あかね噺』は、原作・末永裕樹、作画を担当する漫画家・馬上鷹将による落語漫画。
座布団一枚と扇子、手ぬぐいだけで物語を演じ切る落語の魅力を、馬上鷹将の迫力ある演出と、繊細な表情描写によって臨場感たっぷりに描き出している点が本作の大きな特徴である。
少年漫画としては異色の題材ながら、『週刊少年ジャンプ』で連載され、2026年にはテレビアニメ化も果たした人気作。
落語という伝統芸能を題材にしながら、努力・友情・ライバルとの競争といった少年漫画の王道要素を自然に融合させることで、王道の青春物語として完成度が高く、落語に馴染みのない読者でも物語へ自然と引き込まれる作品として評価されている。
(原作:末永裕樹)
おすすめポイント・感想・レビュー
ジャンプで落語漫画と聞いた時は、「話題性欲しいからってニッチなものやればいいってわけじゃないんだよ」
…と思ってたのに、読んでみたらめちゃめちゃ面白い!
読む前の先入観は一話であっさり覆されました。笑
落語を知らなくても楽しめるようになっていて、夢を追いかける主人公、頼れる師匠、手強いライバルと、ちゃんと王道の少年漫画になっています。
落語という動きの出しにくい題材で、ここまで熱量のある少年漫画になるとは驚きでした。
少年漫画のセオリー×落語
たとえば、『ひらばのひと』(久世番子)のように、伝統芸能を扱った作品は他にもありますが、青年誌ではなく少年誌で、ここまでジャンプらしい熱さを保っている作品はかなり珍しい。
『あかね噺』の一番すごいところは、落語を文化漫画ではなく少年漫画として成立させていることです。
努力して、壁にぶつかって、ライバルと競い合いながら成長していく。やっていることはジャンプの王道そのものなんですよね。
少年漫画の王道をしっかり踏んでいるからこそ、登場人物が高座へ上がるだけなのに手に汗握る展開になるんだと思います。
出てくる落語家がみんな個性的
出てくる落語家たちは、どのキャラも個性豊かで魅力的。
それぞれに、誰にも負けない武器を持っていて、このキャラはどんな落語を見せてくれるんだろうとワクワクが止まりません。
そんな、ある意味特殊能力のような(ギリファンタジーにならないレベル)の個性を駆使したバトル(演目)が、少年漫画的な面白さにつながっています。
朱音や、同期のライバルたちはもちろん魅力的ですが、それ以上に大人たちが格好いい作品でもあります。
志ぐま師匠をはじめ、それぞれの一門の師匠や先輩噺家たちが本当に魅力的。
朱音たちがいつか追いつきたいと思えるような、かっこいい大人たちばかりです。読み進めれば、誰か一人は「この人好きだな」と思えるキャラクターが見つかるはず。
朱音が入門することになる、阿良川一門では、他の一門とは違って、独自の昇進基準があって実力さえあれば若くても真打に上がれるという設定になっていて、そんなところから、モデルは立川流だとわかりますが、落語好きなら、モデルになった噺家を想像しながら読むのも楽しみ方の一つです。
落語パート思った以上に本格的
話芸を漫画で表現するような漫画だと、観客のウケや流れがメインでネタの詳細までは細かく表現されないことが多いと思います。
『あかね噺』では、新作落語はなく古典落語をメインにやっているのも理由の一つだと思うけど、演目そのものもかなり丁寧に描写している印象を受けました。
古典落語そのものをじっくり描き、落語の世界をドラマで見せる劇中劇を交えながら、表情やコマ割り、視線や間の取り方で、高座を描いていきます。
漫画だからできる落語表現を使って「聞こえる落語」を表現する演出が本当に上手い。監修が入っていることもあって、落語へのリスペクトも伝わってきます。
一つの演目を数話にわたって深堀りするので、テンポは少しゆっくりで、落語好きじゃない人にとっては少し長く感じる部分もあるかも。
個人的には、この丁寧さも好きなんですけどね。
今後の期待ポイント・考察
父・志ん太の破門の真相、魁生との勝負、真打昇進への道と、まだまだ楽しみな要素はたくさん残っています。
個人的に一番気になっているのは「どこまで丁寧に描くのか」ですね。
前座編だけでもかなり時間をかけて積み重ねてきた作品なので、最後まで駆け足にならず、朱音が一人前の噺家になる姿をじっくり見届けたいですね。
真打昇進に関しては、まいける真打昇進試験編でかなり盛り上げてしまったので、あれを超える盛り上がりをつくるのは大変そうです。
こんな人におすすめ
『ショーハショーテン』や『アクタージュ act-age』『べしゃり暮らし』などの、芸や表現で勝負する漫画が好きな人なら文句なくおすすめ。
アニメから入った人も、漫画ならではの演出や表情の迫力があるので、ぜひ原作も読んでみてください。
漫画版は声優の演技力みたいな部分に面白さが左右されないので、純粋に落語漫画として楽しめます。
志ぐまが倒れる展開は衝撃だった
まさか志ぐま師匠があんな形で物語から一歩引くとは。完全に予想外でした。
でも、一門がバラバラになることで、それぞれが自分の芸と向き合う展開になり、一気に物語が広がったので、王道ではありますが、とても効果的だったと思います。
フランス修行の意味は?
一方で、フランス修行は正直、意味があったのかな?
『ドラゴンボール』でいう「精神と時の部屋」。『ONE PIECE』でいう「2年後にシャボンディ諸島で」的なイベントだと思うのですが、修行内容はほとんど描かれなかったので「結局何を学んできたんだろう?」という気持ちは少し残りました。
落語漫画で、プロセスを見せずに「前より強くなったぞー!」を表現するのはさすがに難しいですね。
朱音の世間的な知名度をあまりあげたくなかったり、ライバルたちを昇進させるためだったりと、物理的に時間を進める必要があったのは分かるんですが、それ以上の必然性があんまり感じられなかった。
そのうちスピンオフや番外編で補完されたりする可能性もあるかもだけど。
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立川流だと志の輔が好き♪
あとがき
あなたがランキング1位に選ぶおすすめ作品はどの漫画ですか?
暫定ですが、1位は文句なしで『あかね噺』ですね。
正直いうと馬上鷹将って『オレゴラッソ』の時は、めちゃくちゃ画力の高い漫画家というイメージはなかったんですが、絵のパワーアップ具合がえげつない。
『オレゴラッソ』の作者だとは気づかなかった人も多いんじゃないでしょうか。
そういえば、馬上鷹将って尾田栄一郎のアシスタント出身なんですよね。
子どもの頃に『ONE PIECE』へ憧れて漫画家を目指し、その憧れの先生のもとで経験を積み、さらに同じ『週刊少年ジャンプ』で連載作家になる。
こういう話って、やっぱり夢があります。
『あかね噺』で見せてくれた表現力が、この先どんなジャンルで生かされるのかも楽しみです。今後は、原作付きの依頼もかなり増えそうな漫画家ですね。
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