狂気とエロス、そのギリギリを歩き続ける漫画家『山本直樹(やまもとなおき)』
ただ刺激が強いだけの漫画かと思いきや、読んでるうちに妙に心がざわついて、なんだか見透かされたような気持ちになるんです。「エロい漫画描く人でしょ?」ってスルーしてたら、めちゃくちゃもったいない。深いし鋭いし…あと、普通に怖い。
ちなみに、エロ特化のときは塔山森または森山塔って名義でも活動してて、そっちはそっちで容赦ないです(マジで)。
山本直樹の漫画は、性・暴力・宗教・政治…と、なかなか重たいテーマを扱っています。でもその描き方がやたら淡々としてて、逆に怖い。でもだからこそ、リアル。ジャンルの枠とか、タブーとかを軽やかに越えてきて、人間の中身をえぐってくるような感覚があります。
一見あっさりした線なのに、感情がガツンと伝わってくる。あの描線、ただ者じゃありません。
特に目。感情を語らせるというより、読み手の心をグッと掴んでくる感じ。セリフも少ないのに、空気や温度まで伝わってくるあたり…やっぱうまいんですよね、構成も間の取り方も。
手書き時代もいいですが、デジタル作画のクオリティも相当高くて、「この線だけで空気作れる人っている?」って思っちゃいます。
『レッド』では、連合赤軍という実在の事件をベースに、理想と暴力がぶつかり合う重たさがすごい。『ビリーバーズ』では、カルトと性の渦に巻き込まれていく人たちを描きながら、信じることの狂気がジワジワと迫ってきます。そして『ありがとう』は、家庭の中の崩れていくものと、それでも残る何かを静かに描いた一作。
ジャンルは違っても、どの作品も人の奥にズブッと刺さる感覚は共通です。
ちなみに山本直樹自身は、小池一夫の劇画村塾出身。また山本直樹の弟子には『GANTZ』の奥浩哉もいるんですよ。もう血筋からしてエグい。
そんな、読んだら確実に残る漫画家、山本直樹のおすすめ作品を、ランキング形式で紹介します!
読む前にちょっとだけ覚悟を。でも大丈夫、読んだあとにはきっとわかる人になってると思います。
●位 ありがとう
あらすじ・作品解説
山本直樹の漫画作品『ありがとう』は、小学館『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された全4巻完結の青年漫画。
家庭崩壊という重く切実なテーマを軸に展開される。
物語は、単身赴任から帰宅した主人公・鈴木一郎が、暴走族に占拠され荒れ果てた家と崩壊寸前の家族と向き合う場面から始まる。酒に溺れた妻、薬物に依存する長女、思春期に揺れる次女、それぞれが抱える傷と向き合いながら、父として家庭の再生を試みる姿が描かれていく。
『ありがとう』は、暴力・薬物・宗教といった社会の暗部を容赦なく描き出しながらも、その底に潜む人間の弱さや希望を浮かび上がらせる作風が際立っている。
読者からは「読むのが辛い」「本性が刺さる」といった声が集まる一方で、強烈な余韻を残す作品として記憶に刻まれている。
おすすめポイント・感想・レビュー
読み始めてすぐ「えっ、これ家族漫画…だよね?」と戸惑った人、たぶん僕だけじゃないと思います。
暴力、薬物、新興宗教、性描写…いろんな要素が入り乱れて、もはや混沌。
でもなぜか目が離せないんです。全員が壊れかけてて、感情のやり場がない。だけど、それが逆にリアルで。
登場人物のズレや絶望が淡々と描かれていくことで、感情がどんどん摩耗していく感覚。この読後感、もはや文学。読んだあと数時間、変な余韻が頭から消えませんでした。
家族の滑稽さが笑えなくて痛い
ギャグっぽいテンポで進むのに、まったく笑えない。むしろ笑っちゃいけない空気のなかで、変なテンションのセリフが飛んできて戸惑う。
たぶんそこが狙いで、そのズレが気持ち悪さを倍増させてる気がする。
家族を守ろうとする父親も、なんというか全部が裏目に出ていて、その必死さが笑えるというより胸にくる。全員が空回りしてて、誰にも出口がない感じ。
「家族ドラマ」というよりは、「崩壊に向かう家族の観察記録」のよう。
読後に残る異物感がクセになる
読み終えてスッキリしない。ボロボロ泣けるわけでもない。
じゃあつまらないのかっていうと、全然そんなことはなくて、「なんかヤバいもん読んだ…」っていう感覚だけがしつこく残る。見終わったあとしばらく引きずる映画みたいな読後感。
山本直樹の描く淡々としたトーンが、この異物感に拍車をかけてくるんですよ。感情が爆発しない分、どこにも逃げ場がない。
しんどいのに、なんか読んじゃう。
こんな人におすすめ
感情移入で泣きたい人にはおすすめしません。あと、エログロ系描写はあるのでそちらが苦手な人も。
でも、しんどい系を求めてる人、家族の歪みや社会のリアルな闇に目を向けたい人には響くと思います。
子どもの頃に読んでトラウマになったという感想も見かける作品ですが、こういう作品にハマる人、確実に一定数いるはずです。
長女が巻き込まれる事件の描写、どう考えても80年代後半に実際に起きた某事件を連想せずにいられない。当時この作品が問題視されたのも納得です。
暴走族に家を占拠されたり、母親が突然宗教にのめり込んだりと、一見すると設定も展開も無茶苦茶なのに、読み進めるうちに「この異常な世界に慣れてる自分」がいました。
そして、病室での父のセリフが、まさかの小津映画からの引用!
漫画の一番のクライマックスで映画のセリフ使うってかなり攻めた演出ですよね。初めてみたかも。
無料立ち読み

初っ端の展開が衝撃すぎて「これ4巻も続くの…?」って不安になる
あとがき
あなたがランキング1位に選ぶおすすめ作品はどの漫画ですか?

改めて読むと、やっぱすごいんですよ。表現もテーマも重いのに、読みやすくて、妙にリアルで。
そして何より…いや、やっぱエロい(笑)。淡々としてるのに色気があるって、すごいバランス感覚ですよね。
これだけ癖のある作風なのにハマるひとにはめちゃくちゃハマる。サブカル界隈ではずっと評価されてる理由、読めばわかると思います。
まだ未読の方は、まずは2022年に映画化もされている『ビリーバーズ』あたりから入って、そのあと『レッド』→『ありがとう』の順で行くのがおすすめです。万人に進めやすいのはやっぱり『レッドシリーズ』かな。
じわじわ沼に引きずり込まれる感覚を体験してほしいですね。
『分校の人たち』や『田舎』など、近年の作品ですら未だに有害図書認定されているという、その作風は衰え知らず。
最近は新作ペースはゆっくりだけど、たまにフラッとすごいの出してくるから油断できないんですよね…。
また、あの静けさの中の狂気を見せてくれたら嬉しいです。
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