つの丸といえばギャグ漫画。そんなイメージを良い意味でぶっ壊してくれるのが『サバイビー』です。
一言でいえば、つの丸版の『昆虫物語 みなしごハッチ』。だけど内容はハッチとはだいぶ違う。もうね『バグズ・ライフ』と『アンツ』くらい違う。笑
過去作を知っている人は、つの丸がこんな作品を描くなんて…と衝撃を受けること間違いなし。
絵柄はいつものつの丸なのに、物語は驚くほどシリアス。そんな意外な一面が楽しめる昆虫サバイバル漫画『サバイビー』を紹介します。
あらすじ
『サバイビー』は、長雨によって住む場所や家族を失ったミツバチの少年・バズーを主人公にした昆虫サバイバル漫画である。
同じような境遇の虫たちと身を寄せ合って暮らしていたバズーは、ある日スズメバチに追われる一匹のミツバチと出会い、謎の「オーダイ」を託される。この出会いをきっかけに平穏な日常は一変し、バズーたちは圧倒的な力を持つスズメバチに狙われることになる。
安住の地を離れたバズーは、ミツバチたちの希望となるレジスタンス組織「サバイビー」を探す旅へ出発。さまざまな昆虫と出会いながら、それぞれが持つ能力や知恵を生かして危機を乗り越えていく。
小さな昆虫たちの世界を舞台に、弱肉強食の厳しさと仲間との絆を描いた冒険作品である。
作品解説
『サバイビー』は、漫画家・つの丸が描く昆虫を題材とする少年漫画。
『モンモンモン』『みどりのマキバオー』などで見せる従来のギャグ路線とは異なり、生きるか死ぬかの緊張感を前面に押し出したシリアスな作風が際立っている。
スズメバチやクモといった天敵が存在する世界で、弱い虫たちが知恵や能力を生かして強敵へ立ち向かう姿を少年漫画らしい冒険と人間味のあるドラマに落とし込んでいる。
『週刊少年ジャンプ』で1999年に連載され、全3巻で完結。短期で終了した作品でありながら、スズメバチの非擬人化による迫力ある描写や、生への執着を宿したキャラクターの熱量が読者に強い印象を残した。
短編ながら圧倒的な構成力と緊張感を備え、漫画家つの丸の作風の振れ幅を象徴する異色作である。単行本化の際には加筆修正が行われ、連載時とは最終話の内容が大きく異なっている。
おすすめポイント・感想・レビュー
題材は昆虫ですが、中身はかなり王道の少年漫画です。泥臭くて熱くて真っ直ぐな展開にガッツリやられました。
圧倒的に強いスズメバチを相手に、弱い虫たちが知恵と勇気、仲間の力で立ち向かっていく。絶望的な戦力差があるからこそ、一つひとつの作戦や反撃がとにかく熱い!
ギャグの印象が強いつの丸ですが、今作はかなりシリアス。
この『サバイビー』では命の重さや仲間の尊さが真面目に描かれていて、良い意味で裏切られます。
絵柄がちょっと可愛すぎるのに中身はめちゃシリアスというギャップもまたクセになる!
全3巻と短いですが、思っている以上に濃い作品です。
蜘蛛の糸のような緊迫感!序盤から震える展開
絵柄こそいつものつの丸だけど、かわいらしい絵柄から「虫たちの楽しい冒険かな」と思って読み始めると、かなり面食らいます。
とにかく序盤から容赦がない。
ジャンプ漫画で、まさかの初回から仲間全滅。これで完全に引き込まれました。
子供の頃に読んでいたら、普通にトラウマになりそうな展開です。特にスズメバチの怖さは、一度見たらなかなか忘れられません。
しかも、その後も「このキャラは大丈夫だろう」という安心感がほとんどない。いつ誰が死んでもおかしくない緊張感がずっと続きます。
初っ端から読んでるこっちも息が詰まるような展開で、まさに蜘蛛の糸にぶら下がっているような緊張感でした。
虫だからこそ描ける「命の軽さと重さ」
『サバイビー』で印象的なのが、命の扱い方です。
昆虫の世界では、食べることも食べられることも日常の一部。人間の価値観から見れば残酷でも、そこに悪意があるとは限りません。
だからこそ命があっけなく失われる一方で、仲間を守ろうとする気持ちや、失った悲しみはものすごく重い。
さっきまで一緒にいた仲間がいなくなる悲しさも、それでも生きなきゃいけない厳しさもちゃんと描かれてる。そしてその描き方が上手い。
命の軽さや残酷さをリアルに描いていながら、不思議と殺伐とはしないんです。悲しみや葛藤といったドラマもきちんと描かれていて、そのバランス感覚が絶妙なんです。
この「自然界では軽い命」と「仲間にとってはかけがえのない命」の対比がすごくいい!
スズメバチの「無」と擬人化の「熱」、その差がヤバい!
『サバイビー』で一番怖いのは、やっぱりスズメバチ。
バズーをはじめ、 ケラのライバー、デブリン、サバイビーのブル隊長など、主人公サイドの虫たちは、思いっきり擬人化されていて、かっこよくて魅力的。(まあ、つの丸絵だけど。笑)
彼らがちゃんと人間的な表情や感情を持っているのに対して、スズメバチだけは一切の擬人化なし。台詞もなし、ただただリアルな虫として描かれている。これが逆に超こわい。
感情がほとんど見えないから、「悪いやつ」というより、話の通じない捕食者に見えるんですよね。
同じ虫VS虫なのに、感覚としては人間VS感情を持たないメカの戦いに近いんですよね。こちらに一切感情移入させるスキを与えることなく、完全な敵。
意思疎通できない巨大災害みたいな存在として描かれてて、読んでてずっと背筋がゾワゾワします。
こんな人におすすめ
弱い側が知恵や仲間の力を使って圧倒的な強敵に立ち向かう、王道少年漫画が好きな人にはおすすめです。
当時の『週刊少年ジャンプ』ではちょっと重すぎたのか、それともつの丸の絵柄やイメージとのギャップがデカすぎたのか。正直、なぜ打ち切られたのか不思議なくらい。
つの丸=ギャグってイメージの人はびっくりするかもしれないけど、大人になってから読むとめっちゃ刺さりますよ。
打ち切りとは思えない完成度
読み終わった感想としては、3巻でよくここまで見事にまとめたなという感じ。これは、単行本で最終話が加筆されているのも大きいですけどね。
本誌では赤目との死闘の末、相打ちのような形になってそのまま終了という状態でしたので。
加筆された最終回では連載版とは違い、バズーの生存と仲間たちとの再会まで描かれています。これがあるだけで読後感が全然違う!
おかげで、打ち切り漫画にありがちな「途中で終わっちゃった」という感じはなく、ちゃんと最後まで読んだ満足感がありました。
とはいえ、もちろん駆け足感はあります。
それでも全3巻の中に冒険、出会い、別れ、死闘、仲間との絆までギュッと詰め込んでいる。
短いながらも一つの物語として読めるところは、かなり大きなポイントです。
単行本で補完されても、もっと見たかった
でも、赤目との決着やブル隊の活躍など、もう少し見たかったというのが正直なところ。
バズーたちが出会う昆虫は個性的ですし、それぞれの生態を能力やキャラクターに落とし込むアイデアも面白い。もっと旅が続けば、まだまだいろんな虫を登場させられたはずなんですよね。
デブリンが実はゲンゴロウではなくガムシで…みたいな設定も本当はきっとそれを活かす展開がもっとあったんだろうし、最終決戦とそれまでの展開をもっとじっくり読みたかったなぁ。
せめて、後日談も含めてあと5話あればもっと深まったのに…!ホントに惜しい!
打ち切りとは思えない完成度だけど、続いていたら今以上に語られる作品になってたんじゃないかなぁ。
無料立ち読み

打ち切りでも読む価値のある良作!大人になった今こそ読んで欲しい。
あとがき
改めて振り返っても、『サバイビー』が全3巻という短期連載で終わってしまったのはやっぱり惜しい!
連載時期も悪かったのかなぁ。
黄金期の3本柱が連載終了した後とはいえ、当時の少年ジャンプは『ONE PIECE』『HUNTER×HUNTER』『遊☆戯☆王』『るろうに剣心』『封神演義』『ROOKIES』『シャーマンキング』『ヒカルの碁』など十分すぎるほど強い連載陣でしたからね。
さらに、連載中に『テニスの王子様』や『NARUTO -ナルト-』の連載もスタートするという。いや、キツいって(笑)。
『みどりのマキバオー』に続いてこれも当たっていたら、「擬人化漫画といえばつの丸」みたいなポジションになってたかもしれないのになぁ。絵は相変わらず下品で汚いけど(褒め言葉)。
当時にジャンプ+みたいな発表の場があればと願わずにはいられない、名作になり得たかもしれない良作漫画です!
もうね、『ガンバの冒険』とか好きな人なら絶対読んで欲しい。
つの丸のおすすめ漫画作品ランキングもチェック!
ギャグからシリアスまで、思ってる以上にいろいろ描いてる漫画家なので、『みどりのマキバオー』しか知らないという人も、ぜひ他の作品も読んでみてください。
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