「帯をギュッとね!」、「モンキーターン」、「とめはね!」。
作品数は少ないながらも、出す作品が必ず一定水準以上の高評価を受ける漫画家、河合克敏(かわいかつとし)。
ヒット作3本っていう漫画家はいても、デビューから3作続けてハズレ無しっていう漫画家は少ないんじゃないかな。
帯ギュの柔道は別としても(といってもこの頃には柔道マンガはそれほどメジャーじゃなかった。『YAWARA』『柔道部物語』と連載時期はたいして変わらない)モンキーターンは競艇、とめはね!は書道と決して需要の高いテーマではないにも関わらず、これは驚異的。
しかも、ただ単によく調べて描いているだけではなく、めちゃくちゃ面白いエンタメに仕上げているのがすごい。
青春の空気感を表現するのがホントに上手で、王道で描いても十分に面白いはずなのに、なんの縛りプレイか選ぶのはニッチなテーマばかり。笑
マイナーな題材で部活動漫画、青春マンガを描かせたら、この人の右に出るものはいないんじゃないか?
部活動・スポーツ漫画といえば、熱い試合シーン・そして、それと同じくらい定番なのが恋愛要素。
この恋愛要素の描き方が清々しいほどにあっさりとしているのも、河合克敏の特徴のひとつ。
ニッチな世界を描き続ける漫画家、河合克敏のおすすめランキングまとめ!
3位 モンキーターン
あらすじ・作品解説
主人公の野球少年の高校生、波多野憲二(はたのけんじ)。
ある日、高校の担任と、競艇選手をしている卒業生に連れてい行かれた競艇場でモーターボートと出会いをきっかけに、野球を辞め、競艇選手を目指すことになる。
高校卒業後、競艇選手の養成所に入学した波多野。仲間やライバルたちとともに、過酷な研修生活が始まる。
週刊少年サンデーに連載され、2004年にはテレビアニメ化もされている。
おすすめポイント・感想・レビュー
隠れた名作(隠してないけども)「モンキーターン」。
競艇マンガとしては、後にも先にもモンキーターン以上に有名な作品はないんじゃないかな?しかも連載が少年誌というのも珍しい。
現実の競技なので、派手な技みたいのはあんまりないけど、(主人公の得意技が「スタート感」だったり)そこは漫画家「河合克敏」の圧巻の表現力。
手に汗握るレースがめくるめく展開されていきます。
漫画を読んだ段階では、競艇には行ったことも見たこともなかったけど、とにかく面白い。新人時代から積み上げていくので、競艇については主人公と一緒に理解していけます。
見事に青春マンガになっていて、ギャンブルとしての競艇好きじゃなくても楽しめる内容になっています。
面白いポイントはなんだかんだいって、少年誌には定番のラブ。
競艇場でのプロポーズのシーンは名シーン。
しかし河合克敏の青島愛がすごすぎる。サブヒロインなんだけどメインヒロインにしか見えないw
2位 とめはねっ! 鈴里高校書道部(とめはねっ すずりこうこうしょどうぶ)
あらすじ・作品解説
主人公の大江縁(おおえゆかり)は、内気な少年で、小学2年生の時から中学3年生までカナダに住んでいた帰国子女。
高校入学とともに日本に戻ってきた大江縁は、入学式で隣り合わせになった柔道の強い女の子、望月結希(もちづきゆき)に一目惚れする。
二人は先輩たちの策略によって、廃部寸前の書道部に入部することになるのだった。
作中の書道作品は、現役の高校生や書道経験者から一般公募で募集された。
書道監修は武田双雲。2010年にNHKでテレビドラマ化されている。
おすすめポイント・感想・レビュー
作者の河合克敏はニッチな世界を描くのが本当に上手い。
まさか書道漫画がこんなに面白くなるとは。
書道部を舞台にした漫画なんて、地味でパッとしないイメージだけど、見事にエンタメ作品になっています。
確かに、ストーリーも大きな事件があるわけでもなく割と淡々と進むんだけど、ついつい読み進めてしまう面白さ。
とにかく登場人物の心情が丁寧に描かれていて、この関係どうなるんだろ...と気になってしょうがない。個人的に優しい部長萌え。
弱気な主人公につい頑張れよ!と思ってしまう。
作中にいろいろな書道作品に触れることができるので、思わず書道をしたくなる。
1位 帯をギュッとね!(おびをギュッとね)
あらすじ・作品解説
中学の柔道の昇段試験で出会った粉川巧(こがわたくみ)、杉清修(すぎせいしゅう)、斉藤浩司(さいとうこうじ)、宮崎茂(みやざきしげる)、三溝幸宏(みつみぞゆきひろ)の5人の少年。
同じ高校に入学して再開した5人は、柔道部のない浜高に柔道部を立ちあげることに。
コーチたちの指導のもと、全国大会優勝を目指して強くなっていく。
漫画家、河合克敏のデビュー作。
これまでのスポ根系のスポーツ漫画とは一線を画した、高校柔道部の爽やかな王道青春スポーツ漫画。
おすすめポイント・感想・レビュー
今までのスポーツ漫画とはまったく違う爽やかな青春モノ。
『柔道物語』の小林まことも自分の作風に似た作品は読まないようにしていたけど、『帯ギュ』は読んでたというくらい王道のスポ根漫画とは全く別のベクトルの部活動漫画になっています。
新設の柔道部で、スポーツ漫画にありがちな上下関係が存在しないのも大きな特徴。
作者の河合克敏が柔道経験者ということで、試合のシーンはリアルに描かれています。
のめり込んで止まらなくなるタイプのマンガではないんだけど面白い。俯瞰で青春時代の部活を見てるような作品が醸し出す空気が好き。
恋愛要素の描き方があまりにもあっさりしてるのも印象的。
「花道が晴子さんの為にバスケを始めたり」、「トシが遠藤に惹かれたり」、「エーちゃんがなっちゃんと付き合ったり」と、ラブコメ要素も欠かせないスポーツ漫画で、最初から彼女持ちの主人公というのは衝撃的。
他のキャラの恋心もわざととしかいいようのないほど、あっさりとしてる。部活動を題材にしていて、あれだけのコマがそろっていながらそこを描かないマンガも珍しい。
だからこそ余計に爽やかに感じるのかもしれない。
コミカルで熱いストーリーが、「もう一度青春したい!」と思わせてくれる。
当時と比べると柔道のルールもだいぶ変わってしまっているけれど、今読んでもおすすめの柔道漫画です。
あとがき
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まったく興味ない分野なのに、どの作品も読み終わった頃には自分でも始めたくなってます。
ランキングは帯ギュを1位にしたけど、一番衝撃を受けたのは『とめはねっ』かもしれない。書道っていう文化系の部活がこんなに魅力的な青春マンガになるとは。
次は何をテーマにする気だ?と、動向が非常に気になる作家ですね。(うどんちゃんだけは…ホント謎。笑)
読み切りで描いてたけど、自転車マンガも改めて連載で読んでみたい。